第111話 地下書庫では読書です2
その事実にしばし放心し、仰ぎ見る。
石でできたこの地下室にはあまり光が入って来ない。
そのために薄ぼんやりとしか見えない天井をぼぅっと見つめてから、思考を戻す。
このことを父達は……知らないんだろうな。
知ってたらどこかの文献に書いてあったり、
すでに教えてくれていたりするだろう。
僕は再び本に目を戻す。
余白に書かれた日本語や方程式。
ベル・フォンターニュが残したそれを追っていくと
いつの間にか最後のページにたどり着いていた。
「これは……」
その項には日本語でこう書かれていた。
君がこれを読んでいるということは僕と君が同郷であるということだね。
いや、もしかするとこの世界の文献学が発達して解読されたという可能性もあるのか。
まあ、その可能性は無視することにしよう。
さて、早速だけど本題に移ろう。
もし君が次の問題に答えられるならば僕の実験室を譲ろうと思う。
何故かって?そりゃあ僕の研究を引き継いでもらうためさ。
まあ、この本の本編に書いてあることとほとんど同じだから他の人にされ尽くしてるかもだけどね。
だけど、研究するのに必須な知識が無い人には実験室は渡さない。
実験室が宝の持ち腐れになっちゃうからね。
だから、頑張って問題に答えてねー。
では、
『知識が集積される部屋、その最奥。鍵はこの星から一番近い恒星。それが最も高く上がるとき照らされる場にあり』
以下の問いに答えよ。
Ⅰ.百八ページにある式。粒子においてはその解となる関数の絶対値を何乗するとその存在確率となるか。
Ⅱ.百六十二ページ。この式のj。これを乗算することは位相を何十度進めることと同義であるか。
Ⅳ.二百二十五ページの上部の式、一番左の原子。その原子番号の一桁目。
Ⅷ.あーうん、もうめんどくさいや。二の二十乗の一の位の数。
最後にマイナス四を四ビット二進数、二の補数表現にして零は右に一は左に回せ。
これは……
っていうか四問目ぇっ。
問題の雰囲気をぶち壊しているじゃん。
それはおいておくとして、えーっと、百八項だから……
そうしてページをめくろうと手を動かしたところで
「アヤト。ご飯の時間よ。」
急に後ろから声をかけられる。
ビクッと飛び上がってバランスを崩し、そのまま椅子ごと後ろに倒れてしまう。
その状態で見上げると、青い瞳と紅い瞳が並んでいた。
「あー気付いてると思ってた。だったら今がチャンスだったのかしら。失敗したわ。」
「……こんにちは。大丈…夫?」
解答は中断だな。
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