第110話 地下書庫では読書です1

ペラリペラリとページをめくり、読み進めていく。


目次には

ひい爺ちゃんがどのように魔法を発見したのか、

またそのきっかけとなった現象の研究。

魔力特性について記述から、魔導具の基本構造。

さらに、これから研究して欲しい項目など

様々な項目が書かれていた。


「へぇ-。なるほど、そんなことがあって魔法を見つけたのか。」


一章から読み始め、魔法研究の軌跡を辿る。

この本によると、昔から明かりに使われていた

握ると光る『光石』というものに疑問を感じたのが

魔法の発見につながったらしい。


握ると光るなんていう便利なものがあったのか。

でも、見たこと無いぞ。何故なのか後で聞いてみよう。


一章を読み終わり、さらに読み進めていくとこんな記述があった。


さて、魔力の――としての挙動を表す時に使用する式がある。


その文の下に目を移すと――


「は?」


思わず声が漏れる。

なぜなら……


「しゅ……シュレディンガー方程式……。

なんでこんなところに書いてあるんだ。」


そう、そのページの下側隅に書かれていたのは

あちらの世界の大学で習った式であった。

こっちの世界にあるはずが無いのに……


驚きで手が動き、ページがめくれる。

すると、そのページにはまた別の式、

こちらはこの世界でも使われている式が書かれている。


どういうことだ?

元のページに戻ってしばし考える。

よくページを見比べてみると、

方程式の書かれているところの上の行が

他のページでは最終行の高さ。

つまり、方程式は余白の部分に書かれていることに気付く。

しかも、それは向こうの言語で書かれているじゃないか。


「もしかしてお父さんはこれを謎の模様と言ってたんじゃないか?」


そう考えて、ページを進めていく。

すると


「あった……。

今度は、回路の複素インピーダンスだ……。」


魔導具の中身、魔導回路についてのページで

またまた余白に向こうの世界の知識が

向こうの世界の言葉で書いてある。


これはもう確定だろう。

ベル・フォンターニュは僕と同郷。


まさか、ひいお爺ちゃんも転生者だったとは……

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