第97話 始まってからの三日です2

「おはよー」


がらっと扉を開けると、


「おやぁ、これはこれはまりょ――」


ぴしゃんとその扉を閉めた。

朝からなんでちょうど扉を開けるタイミングでいやな奴が目の前に立ってるんだよ。

自分の運を……いや違うな。

昇降口で見かけたあの人影か。

あれがアデクに僕たちが来たことを伝えたってところだろう。

よくもまあそんなしょうも無いことに労力を割けるものだ。


しょうがないので教室の後ろ側のドアに向かおうと手の力を緩めると

今度は向こうが開ける。


「よう、魔力無し。

いきなりあれは良いご挨拶だな。

それよりも、教授の息子さまが無色でしかも数値ゼロとか。

ぶわっはっはっ。」


腹を抱えて笑い出すアデク。

っていうかちょっと待て。


「僕の特性数値をどこで聞いた。」


アデクは笑い転げて答えない。

後ろでクスクス笑っている取り巻きも同様だ。

イラッとしていると、教室の奥の方でアレフが手招きしているのが見えた。

しかし、こちらは奴らのせいで通れない。

そのためもう一つのドアに向かおうと体を横にむけた。

そのとき、後ろからものすごいプレッシャーを感じた。


「どいて。」


咄嗟に振り向くとルーシェちゃんだった。

さ…殺気だと……

彼女の言葉と態度にアデク達の笑いが止まる。

一瞬の静寂。

そこでルーシェちゃんが一歩踏み出すとアデク達は後ずさりする。


「二人とも、行くわよ。」


「お…おう……。」

「……う…ん。」


ルーシェちゃんに続いて教室に入る。

アデクたちの壁が割れる。

まるでモーセだ。


そのまま、いつもの三人のところにたどり着く。


「すまん、アデク達を止められなかった。」


「いや、別にいいよ。

どうやってもああいうのはやめないだろうし。

それよりも、僕の特性数値の件って?」


「それなんだけど……

隣の教室からフリッツさんの声が聞こえてた。」


フリッツさん~~~~~~~~

心の中で絶叫する。


「……ごめんね。」


「いや、ミリアちゃんは何も悪くないよ。」


そうこうしていると、


「はいーみんな。席についたついた。

朝の会始めるよー。」


テレージア先生が教室に入ってきて、

みんな席に着くのであった。

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