第86話 今年もこの時期です3

午後、ようやく僕たちのメインイベントが来た。



ミッション

 オスカーに魔力放出の技量を認めさせよ


詳細

 オスカー・フォンターニュの前で以下の条件を達成せよ。

 一、指定された的に魔力放出を命中させる。

 二、一の条件を満たした上で、その威力が設定された基準以上である。



まあ、簡単に言えば魔力放出の習熟度テストである。


「始めるぞ。今日狙ってもらう物は、二つある。

一つはお馴染みの氷塊。もう一つは――」


背後の草原。そこに居る、イノシシのような動物を指差す父。


「ピュイサンボアだ。まだ、二人は動物を狙ったことは無かったよな。」


僕とミリアちゃんは頷く。


「でも、撃っちゃっていいの?」


「ああ。動物は、個体差はあるとはいえみんな魔力を持っているからな

組織構造が魔力波の変化にある程度の耐性を持っているんだ。

だから、魔力放出を受けてもほとんどの場合気絶までで済むぞ。

まれに、骨にひびが入ることもあるらしいがな。

まあ、威力が足りなければただふらつかせるだけだったり

なにも起きないという結果になる。

今回はふらつかせられるだけの威力が出せれば十分だぞ。」


じゃあ威力が足りれば、対人戦闘の引き出しの一つから

護身術の代わりにまでも使えるって事だ。


説明を終えた父は魔導具で氷塊を作り、

それを五十メーテ程先に設置する。


「えっ、遠くない?」


「何を言ってるんだ。静止目標だったらこれぐらいで当てられないと意味ないぞ。」


そうなのか。


「他に質問はあるか?」


僕からは特に無いが……


「……何回までいいの?」


そうか、挑戦可能回数忘れてた。


「今日は回数じゃなくて時間制限五ミニでいこうと思う。

抜き打ちみたいな形になったし、この距離からは初めてだろうからな。」


納得した僕たちは、父の指示で位置につく。


「それじゃあ。始めっ。」


右手を銃の形にし、魔力を集める。

まずは、一発目。

あっ、手がぶれた。

撃ちだした魔力は的の右をかすめていく。

しまった。この距離だと打ち出しの手をちゃんと固定しないとだめなのか。


二発目は、左手で右腕を支える。

今度はっ。

的には命中したが、微妙に削れただけだった。


「アヤト、もう一回。」


やはりダメか。

当てることに意識を取られすぎて威力が足りなかったようだ。


三発目。

構えはそのまま、意識を威力を上げることに向ける。

すると、ガシャンと音を立てて氷塊は砕け散った。


「アヤト、合格。とミリアちゃんもだな。」


父からオーケーをもらった直後、ミリアちゃんもクリアしたようだ。


「よーし、次は移動目標だ。」

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