第17話 フリッツさんは過保護です
「なんで、そんなに疲れているんだ?」
身体強化の練習をしていた僕はフリッツさんにそう聞かれた。
「十セットもやればこうなるでしょう。」
「なに言ってるんだ?普通、たった十セットじゃそんな風にはならんぞ。」
「ミリアちゃんだって、ほら。」
「そりゃ、最初は魔力を動かす感覚とかいろいろ掴まなきゃいかんから
神経を使うが、坊主はもう三回目なんだろ。」
「はい。」
「だったら、やっぱりおかしいぞ。動かす魔力量がそれぐらいだったら
百セットやってもそんな疲れ方にはならんはずなんだが……」
「やりかたがちがう?」
「いや、見た限りでは俺たちがやっていた方法と同じだ。
だから、なにがそんな風にさせているのか分からんのだ。」
「「う~ん。」」
「二十セット……できた。」
「おお~偉いぞミリア。今日から毎日続けような。俺も見てやるから。」
なぜ身体強化の練習で僕が異様に疲れるのかは分からなかったが、
フリッツさんがミリアちゃんに異様に甘いことだけは分かった。
最初は教えるの渋ってたくせに。
その後、フリッツさんは店の方に戻り、
ミリアちゃんと二人で本を読んだりして過ごしたのであった。
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「ミリア、今日はアヤト君と外で遊んでらっしゃい。」
ミレナさんがそう言ったのは、フリッツ家三日目の朝であった。
ミリアちゃんが固まる。
ミレナさんはそんなミリアちゃんの横に移動して、内緒話を始めた。
ふと視線を感じてフリッツさんの方を見ると、
彼は「娘は絶対にやらんぞ。」とでも言うような顔をしていた。
あなたの奥さんが言い出したことなんですが……
視線を戻すと、
ミレアさんになにかを言われてミリアちゃんの顔がどんどん赤くなっていく。
必死に首を横に振るが、ミレナさんにまたなにか言われて、動きを止める。
そして、観念したかのように頷くのであった。
「いっ…しょに、あそ…ぼ。」
ズギューーン。
そう表現するしかないような衝撃が、僕の胸に走る。
「う……ん。」
僕はどぎまぎしてそう答えるのがやっとであった。
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「いってき…ます。」
「いってきます。」
「行ってらっしゃい。」
「い……い…い、行ってらっしゃい。」
フリッツさんの顔が悔しさにゆがんでいる。
ハンカチを渡したら端っこを噛んで、「クゥゥゥ~」とでもやりそうな勢いである。
午前に身体強化の練習と読書を終えた僕たちは、
ご飯を食べた後、早速外へ出ることにしたのである。
中央広場までやってくると、
「こんなところ、あったんだ……」
ミリアちゃんがそうつぶやいた。
んっ?ちょっとまて。
「ミリアちゃん、ここくるのはじめて?」
「うん……」
「いままでそとであそんだことは?」
「いえの……まわりで、ちょっと。」
「だれかとあそんだことは?」
「おとーさんと……おかーさん。おとーさんが……ほかのひとはダメって。」
過保護も過保護、あり得ないレベルに過保護すぎるだろフリッツさんっ。
心のなかでそう突っ込むしかなかった。
そんな僕たちに声がかけられるのであった。
「お~い、アヤト~。」
訂正、フリッツさんのせいで僕だけに声がかけられるのであった。
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