第2話 『アワビさん』
♪デカマラくわえたアワビさん 潮吹いて~
ワイフを忘れて アクメるアワビさん♪
みんながオナってる~ そいつでオナってる~
ル~ル ルルル~
今日も いい前戯~♪
ということで。
日本の出生率は過去最低を更新し続け、人口は衰退の一途を辿った。
その原因は、親の過保護と性に対する認識不足が助長し、または非正規労働者の増大と賃金の低下が反比例したものである事は誰の目にも明らかであった。
そんな折、政府が本格的に本腰を入れた子育て政策の改善策が打ち出された。
それが、この国民的アニメと位置づけられた、『アワビさん』であった。
以前の海産物の名前のアニメは、大手電気メーカーの撤退とともに打ち切りとなり、新しくスタートを切ったこのアニメ。最初こそ、卑猥なネーミングで親からの苦情が殺到したが、国は公務員に対してのプロパガンダを施行し、絶対的に服従させる事により肯定させるという荒業を強行してきたのだった。このアニメを否定する者は非国民のレッテルを貼られるとあっては公務員や権力者はたまらずに従うしか道はなかった。それがどんなに卑猥な内容のアニメーションであったとしてもだ。
ただ、蓋を開けてみれば、大声で騒いでいたのは一部の親や教師だけであり、性教育に寛大な団体や、それを良しと思う親達も増え、いつしか子供たちの性教育は充実し、数年後には出生率が2割増しになるという過大な評価を残す結果となった。
では何故、この『アワビさん』というアニメが子供たちの性教育に一役買っていったのか、その理由を紐解いてみたいと思う。
まず、主人公の『アワビさん』という女性は、実はもとは男性であり、性転換をして女性になったという経歴の持ち主だというから驚きであり、奇抜な設定には度肝を抜かされたことだろう。
何故、アワビさんは性転換したのか? それは第256話の『マングリ返しの夏』で明らかにされるようだから、ファンは要チェックだし、絶対に見逃せないだろう。
そして、アワビさんの夫のカマスさんと、会社の同僚のアナルくん。それに、おとなりの小説家の赤貝さんとの三角関係から勃発した家庭崩壊の序曲は、第800話、『カマス マスをかく』でベールを脱ぐ。だって、アワビさんの妹がワカメ酒を飲んでいるところを、父である舐め平に見つかり、乳を舐められているところを目撃したのが、なんと、引っ越した筈のハメさんだというから恐れ入る。これでは収集はつかないのでは? とファンの間からは囁かれたものだが、どうにもこうにもニクいヤツで、結局、アワビさんの子供のマラちゃんだったという驚愕のオチであった。
結局、第9999話、『夢オチでごめんなさい』では、アワビさんが発狂してカマスさんを殺し、その臓物をマラちゃんに喰わせるという前回の伏線を、本当に夢オチにするという最低最悪の話にしてしまったことで国民の怒りは爆発。国会の前ではストライキが頻発し、行政は機能できないまでに陥った。そして、いつしか子育て支援の一環であったこの政策は廃れ、公営ギャンブルを助長させる広告塔にすり替わっていたことに多くの国民は騙され続けていくのであった。また、事実上の最終回である第12345話『アワビ 首相になる』では、本当にアワビさんがバーチャル首相として国のトップになってしまい、もはや人格が存在せずとも架空の存在が一国を担うまでに到ってしまうのだった。その頃からであろうか、日本国民は考えること、抗うことに興味を無くし、いつしか無気力な世代が増大していくのであった。それこそ、出生率の低下どころではなく、海外との和平も均衡を崩し、いつ他国に征服されてもおかしくない状況にまで陥ることは、そう遠くない未来なのだろう。
まさか、ひとつのアニメが国を滅ぼすという結果を招いてしまうのだろうか?
それはわからない。誰にもわからない。 おわり。
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