第5話

何かいつもと雰囲気が違うと見えるかなって。何かね、何か。お通夜ですか?他の場所と比べて。沈痛ですか?沈痛剤を飲ませてください。異常ですか?それって。あたしのせいですか?あたしが原因?あたしがいると皆変わるのは、あたしがいるから?「あたし学校来んなよ」「あたし察しろよ」「あたしのせいだ」空気から声が来てる気がする。あたしを片目で眺めて嘲笑っている気がする。あたしが入ると席に座った皆の冷たい目線がある。異物なあたしが参加する。たとえ喋っていてもあたしの前で会話が少なくなる。遠くの小声があたしの噂じゃないのかって。そしたらあたしのいない場所に出掛ける。あたしがいなければ居心地良いとか思っていたりして。「あたしがいると変な感じになるよね」とか言ってたりするのかなって。あたしが休んだ日はあたしのいる時より盛り上がるのかなって。あたしが息すると皆の顔が難しい。女子達の顔が恐い。あの娘やあの娘やあの娘同士のひそひそ話や馬鹿笑いがあたしに届くと恐い。珍しく笑う時の挑発的な顔が浮かぶとあたしのことを言ってるのか不安で恐い。目に見えて虐められるのかこれからのことが恐い。もう既に虐められているかもしれなくて恐い。あたしは教室で目立っているのかなって。あたしの息が皆に聞こえてあたしがうるさいのかな。だから誰も何も喋らないの。でもなんで。どうやって。何でこうなるんですか?あたしのせい?あたしのせい?あたし見られているかな。あたしのこと見られているのかな。犯人はあたしだって分かられているのか。いやいやいやぁ。考えないようにしてたのにぃ。そうかもしれなかったら恥ずかし過ぎて恐過ぎる。意識ぐるぐる。止まってぐるぐる。あたしは席に座る一人。顔から張り詰めた灰色吐息。なにこれ。皆はどうなのって不整脈な咳払いだけ音立てる。無反応の反応を見せる人達に急かされてあたしの呼吸は乱れます。悩みが嵩み生体リズムが心拍数以上に。乱れます。どうやって息してるのか分かりません。どうやって生きていたのか分かりません。意識すること止まりません。耳の中の気圧が乱れます。身体の穴空き部分が空くのを埋めようとする乱れます。真下増した空腹とか顎とか中耳腔とか乱れまして異音は阻止できません。視線が定まりません定まったら危ないもので。逃げ足駆け足で隣の個室に座られると緊張して上手く尿が排せないトイレに行って密かに調整したり、廊下の後ろに行って誰にも見つからないよう細心に注意して調整したり。そこは静かになって使い物にならないと判断した人は去るのがしばしば。ただ生きるだけであたしは皆の迷惑です。

…………。

……。

あたしが悪い。じゃああたしどうすれば。一切合切辞めること最善でもそれができないそれが認められないだろうし。こう考えて日を跨いで妥協して自ら頭を悪くしにそこへ行く。

見られてない?聞こえてない?あたしの生活音鳴ってない?思っている間に恒例のように誰か微かに咳き込む。休み時間も席から動いこうとしない。見えない内心を包み隠す時間が始まった。あたしが勝手に精神負荷を抱える状態がずっと収まらないって。あたしだけじゃなく周りに悪影響を与えるんだって。しばらくすれば皆よそよそしくなった。皆が皆同士でカラオケに行かなくなり遊ばなくなり話さなくなり個人になった。仲良くはなく悪くすらない居た堪れない硬直した在籍するのが苦痛で、辛いことが浮き彫りになる場所。

あたしが壊した。経験則からはっきり分かる。あたしがいるだけであたしのせいで。あたしいるだけなのに。あたしのせいで。だけど誰もあたしを問い詰めないのはあたしに配慮しているから?差別しているから?そんなんじゃ更々ないのか。分からない。聞けないから。苦し紛れの集団下校。会話しなくてあたしは一人。否定されているような後を引いて。夜の道。帰り道。完全な一人になって演技が解かれ憂鬱が大量に出現する。苦しい落ち込み歩くの遅い。あたしの精神が重たい。情景なんて関係ない。効率重視の意欲が感情優先の無闇に陥り、下がる生きたエネルギー。暗い道。目が虚ろに赤信号を眺めてる。

なぜあたしはこうなの。こんな生き方なの。治らないの。病院に行こうとしたことは何度だって。だけど多分前例が一つもない一人きりの症状だって。誰かに言えるような内容でもないって。だからこそ分からないから突然記念すべき時に治るかと思った。年越しの瞬間になったら治るか、それで無理だとしても十年後で治るか、明日には。思い続けてきて治る様子がない。このまま治らなかったらどうなるの。どうすることもできない暗い未来だけが見えてきっとそうなる。嫌です。嫌です。嫌です。表情失せた。あたしのせいです。あたしのせいで皆そんな風にそういう顔に。あたしがあたしを変えられない。あたし死ぬしかないんだ。死にたい。死にたい死にたい。死にたぃ。こんなことしてしまってごめんなさい。謝ります誤りを謝りますごめんなさい本当にごめんなさい。絶食して死のうと思うあたしはいないと思ってください。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいとてもごめんなさい。あたしとても。はぁ、んんん……ぬぁ、にゅわもぉ、ぁ、ああ、せい、あたし。くは、がぁもー、なんでこう……くるし、つら、しに、しの、やめ、いやぁ…………あぁもう…………………………。あなたが沈むのはあたしのせいなんです。あたしが障害だからあなたがそうなってしまうの。あたしおかしい。あたしはあたしだけが唯一の障害者。瘴気発酵者。こんなあたしだ。あなたたちは認識しているのかな。これがあたしだって。椅子の脚蹴られて怒ってるのかって恐怖。あたしのせいだって。秘密がばれた?そうですあたしが悪いです。あたしのせいじゃない。わざとじゃないのに。あたしのせいです。あたしの癖が。治らない内は人混みは避けて。あたしだけで生きていく。あたしがこんなんで喜ぶと、他の人が嫌がるから黙ってよう。そんなあたしが一番嫌なことを避けられない。そろそろ死ぬかもしれない。悩み続けて生き長らえたけど。こんなんじゃ生きたくない。重い複雑に重い思い沈んであたしの罪過。この感情を撒き散らすことはできなくて自分の中に積載する。誰とも喋らない。めんたるへるす。めんたるへるす。めんたるへるす。ごめんなさいあたしがいて。めんたるへるす。

おかしいあたし。あたしおかしいな。

死んでしまいたくて黙る。

自殺するかしないか。

最悪な身体の中。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る