○ アイの形

 約束は、言葉は、呪いに似ている。

 優しくて温かいのに、音もなく気が付かないうちに心を縛られ、逃げることは叶わない……そんな『呪い』。



「そんなあなたが好き」だなんて言ったって、そんな私でなくなれば嫌うでしょう?


「大丈夫?」そう聞いたとき、「大丈夫」以外の答えは求めていないよね


「約束しよう」と笑ったあなたは、その言葉自体を忘れている


「絶対だよ」って絶対なんてないくせに



 私はたくさんの人にたくさん『呪いことば』をかけられてきた。



 だから、私も呪い返すの。



 言葉という、真綿のように柔らかくて温かな呪いで、あなたの心を強く縛るわ。


 離れられないように。


 あなた自身は私の前から去ったとしても、

 あなたが私を忘れたとしても。

 その心だけは私から逃げられないように。



 それが私のアイの形。


 誰にも気付かれることはない、私の密かな呪い方。

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