○ 交わるセカイ─僕─

 君はいつも独りぼっちだった。

 なのに、いつも笑っていた。

 僕なんかより、もっと、ずっと、辛いはずなのに。

 それでも、笑っていた。

 この世界は綺麗だ、と、いつも言っていた。

 僕が世界は残酷だよと、言っても。

 綺麗だって。

 ──最期の最期まで。

 君はいつもの様に、花が咲くみたいに綺麗に笑って、

「世界は、本当に綺麗だね」

 って言った。

 どうして、たった数秒先の未来もわからなかったんだろう。

 僕は、

「綺麗な訳がないよ。世界は、残酷なんだ」

 って、結局、一度も君の言葉を認めることは出来なかった。

 それを聞いた君は、いつもと同じ様に笑って、


 大空を舞った…………────。


 君が世界に染まりながら落ちて行くその様を、とても綺麗だと思ったけど。

 同時に残酷だと思ったんだ。


 そして、もう二度と伝えられない言葉を、そっと、心の中でささやいた。



「好きでいてよかった」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る