貴女の瞳に惹かれた私
宵月アリス
私の全てを貴女に
シンと静まり返った教室の片隅に、私は居た。もちろん、その他の生徒達はまだ残って談笑しているのだけれど、私の意識は彼女だけに向いていた。周りからの音も、何もかもをシャットアウトして彼女だけを見つめている。
「はぁ…今日も可愛いなぁ」
つい零れてしまった言葉を誰かに聞かれてないか、あたりを見回した。が、幸い誰にも聞かれなかったようだ。
それもそのはず。私、
そんな私も、今恋をしているのだ。届かない、絶対に届きはしない思いだけどずっと思い続けているのだ。双子の妹である、
学校からの帰り道、私はいつも通り楓と帰っていた。
「…でさー、体育の時間転んじゃって」
「それ、見てたよ。お姉ちゃんって、何も無いとこでも転ぶよね…」
じとーと、向けられる赤い瞳。その目を見る度に、ドキドキしてしまう自分が恨めしい。
「あはは、見られてたか…てか、楓も大きくなったね。中学生の頃は同じくらいだったのに。身長も、胸も」
そう言うと、私は自分のペッタンコな胸を見た。
そして、チラリと横を見る。そこには、私とは違うDカップくらいの胸があった。
「ちょ、お姉ちゃん!セクハラはやめてよね。中学といえば、お姉ちゃんはいっつも学年一番だったよねー」
と、そんな他愛のない話をしていると後ろから
「おーおー、おふたりさん。いつも通りラブラブで何よりですなぁ」
「あ、百合。どうしたの?あと、別にラブラブしてないから」
この子は
「あ、百合さん。お姉ちゃんがいつも迷惑かけててすみません」
「そんなことないよー。それより、今日もさくらのオッドアイはかっこいいねぇー」
そう、私は青と赤のオッドアイなのだ。しかも、地毛で銀髪なので中学のころはいじめられていた事があった。
「で、何の用なの?百合の家、方向反対じゃん」
「え?僕はこの先のパン屋さんに行こうと思ったんだよ」
「いや、そこ私の家だから。てか、いつも言ってるじゃん…」
「ま、行きましょーや。お腹減ったし、おばさんはおまけしてくれるし」
それが目的だろ。
私達は、そんな話をしながら帰路に着いた。
その夜、夢を見た。
いじめられている私がいた。そして、それを見ている私がいた。
要は三人称視点で自分を見ていた。
精神が疲弊し、麻痺し、今にも自殺してしまいそうな私を助けてくれたのが、楓だった。
『お姉ちゃんをいじめる人は、私が許さないから。私がお姉ちゃんを守ってあげるから』
と、笑って言ってくれた楓に私は惚れたのだ。
「ん…もう朝か」
少しだけ開いたカーテンの隙間から、朝日が差し込んでくる。
そして、下からはフワッとパンの焼けるいい匂いが漂ってくる。
この夢をみて、あのセリフを聞いて、私は目が覚める。いつも通りの日常だ。
「お姉ちゃん、起きてー。今日は買い物行くんでしょ?自分で言っておいて、やっぱなしとかダメだからね」
「分かったよー。今起きるからー」
そして、私は隣町の楓とショッピングモールまで買い物に来た。
楓と服をみて、雑貨をみて、お昼を食べて…そんなことをしているだけで、デートしている気分になって私は終始浮かれていた。
「お姉ちゃん、これ変じゃないかな?」
「ん?似合ってるよ。すごく可愛い。流石私の妹だ!」
「いや、そこ関係ないよね」
的確なツッコミもいつも通りです!
(私って、Mなのかなぁ…)
そして、私達は近くの公園まで来ていた。
「ここで、いつも遊んでたよねー。私と楓と百合の三人で」
「あったね、そんなこと。小学生ぐらいの頃だよね」
夕日が当たって赤くなっている楓の顔を見るだけでフワフワした気分になって、すごく幸せだった。
「…ねぇ、楓。私って、ちゃんとお姉ちゃん出来てるかな?」
「いきなりどうしたの?お姉ちゃんらしくないよ」
「いや、少し気になってさ…」
「うーん…まぁ、怠惰で、ダメで、シスコンで、ひきこもりなお姉ちゃんだから。お姉ちゃん出来てるか…って言われたら、出来てないかなぁって思うな」
そ、そこまで言われるのか…って、
「え?私、シスコン?そんなことなくない?」
「ほんとお姉ちゃんってわかりやすいよね…あれじゃバレバレだよ」
(えぇー!バレてたのか…恥ずかしい。穴があったら入りたいよぉ)
「ふふっ。でもね、私はそんなお姉ちゃんが大好きだよ。出来てるかどうかじゃなくて、お姉ちゃんらしいお姉ちゃんが大好き」
「え?それって…」
告白?告白と捉えていいんですか?
「もちろん、姉妹としてね」
で、ですよねー。分かってたよ…
「そうだよね、姉妹としてだよね」
そんなことは分かってる。私達は家族で、しかも女同士なのだ。
「それでも、私は楓が好き。姉妹としてじゃなくて、女の子として。likeじゃなくて、loveで」
「……ふふ…あはは、はははははっ!」
「な、なんで笑うの!私は本気なの!」
「いや、お姉ちゃんらしい告白だと思ってさ…いいよ、私もお姉ちゃんが大好き。だから…私と付き合って」
「楓…」
そして、私達は自分たちの愛を確かめるように唇と唇を合わせた。
もう二度と、離れないと誓うように。
その近くでは、私たちを祝福するかのように夕日でオレンジ色に染まったキキョウの花が風に揺れていた。
貴女の瞳に惹かれた私 宵月アリス @UTAHIME
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