無気力ヒーロー
小花井こなつ
事件
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
といった叫び声から事件は始まった。
けたたましい叫び声で起こされた俺は、少々機嫌が悪かった。何があったのかは知らないが、何人たりとも俺の睡眠を邪魔する奴は許さない。せっかくいい夢を見ていたというのに……この恨み、忘れない。末代まで呪ってやろうか。
ソファから体を起こし、ガリガリと頭を掻く。生徒会室は俺と騒ぎの元凶の二人だけ。他には誰もいないようだった。
「倉間! 事件だ事件! この学院始まって以来の大事件だ! おちおち寝ている場合じゃないぞっ!」
「うるさいなあ……どうしたの森本。頼むから静かにしてくれない? 頭に響く」
ドアの近くにいた森本が俺に迫る。あいてて、胸倉を掴んで揺さぶるのやめてくれないかな……
「倉間! それでも生徒会長か! 俺は失望したぞっ!」
「は……? 何に失望したのさ……勝手に期待されても困るんだけど」
そう、この東学院の生徒会長は俺『倉間律』である。何故か俺は生徒会長という荷が重い役割を担っている。単に成績が良いから、という理由で無理やり生徒会長の座を押し付けられた感じだ。
「くーらーまー! とにかく来てくれ! 説明はそこでするっ!」
「ええ……大事件とかどうでもいいんだけど……森本、お前だけで解決してよ。めんどくさい」
「なんと……! これが誇り高き東学院の生徒会長の言う言葉かっ……?」
そう嘆く森本を横目に、俺は大きなあくびをする。正直寝ていたい。しかしこの森本をどうにかしない限り、俺の安眠は保証されないだろう……眠たい目を擦りながら、俺は森本に問いかける。
「はあ……で、何があったの? 騒々しい。俺が行かなきゃダメなやつ?」
「ああ……お前の力を貸してくれ倉間! 演劇部で幽霊が出たんだっ!」
もう面倒事は勘弁なのだが。文化祭を控えているというのに、次から次へと問題を持ってこないで欲しい。幽霊? 何それ? 俺が行かなくちゃいけない感じ? 森本は差し迫った表情をしながら俺を見つめる。俺はため息をつき、森本の顔を見る。
「行けばいいんでしょ。行けば。ったく……こっちは眠たいのに……ふああ……」
「おお! 生徒のために立ち上がる、それこそが生徒会長だ! さあ問題の演劇部に行こうっ!」
「ちゃっちゃと終わらせて俺は寝るから……はあ、だるいなあ……」
俺はソファから立ち上がり、森本と生徒会室を出る。まだ覚醒しきってない頭を押さえながら、おぼつかない足取りで演劇部の所に向かった。
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