昨日見た君は今日の僕。

田沼 出雲

一週目 こんにちは

「こんにちは」


とても暑い真夏のお昼ごろ

君に話しかけられたのを覚えてる


「・・・こんにちは。」


少しお辞儀をしながらそっけなく僕は答えた

もともと人と話すのがすごく苦手で

いつも本やゲームなどの世界に閉じこもっていた

話しかけられるのも久しぶりで、変な冷たい汗が背筋をなぞった


「とても良い天気ですね。何を読んでらっしゃるんですか?」


僕は顔さえ向けずに下を向いたまま答えた


「・・・今日発売したばかりのホラーの小説です。」


僕がホラー好きなのは昔からだった。

高校のころも教室でずっと一人で読んでいた。


「へぇ、怖いのすきなんですね!私もです!」


急に話かけられてうんざりしていた僕も、その一言で彼女の顔を見る気になったのだ




「      」




大きな瞳

長くてきれいな髪

つやつやした唇

細くて白い足


僕の目に一瞬で飛び込んできた。

次の瞬間には

呼吸が少し荒くなり

脈は速度を上げ

冷たい汗は量を増した。


「どうかしましたか?」


笑顔で答える彼女に


・・・なんでもないです


といったつもりだが、きっと届いてない


何とか落ち着くために彼女の顔の向こう側みたとき


強く強く光る太陽が僕の目をつぶした。

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