にゃおう様と一緒

にゃむにゃむ

第1話 吾輩の名は・・・・・・。

 吾輩は魔王である。種族は猫魔。俗にいうケットシー族である。名前はコロ・アルファス・イレヌルタ・ウェパール・エウェパズズ・オルゼブエル・フェネクス。

 部下からはなぜか『にゃおうさま』と呼ばれておる。

 語尾に『にゃ』が付く訳でもないのだが、なぜか皆がそう呼ぶ。

 最初は是正しようと頑張ったが、今はもう諦めた。そんな無駄な事をするよりも吾輩は公務が忙しいのだ。


 吾輩の朝は早い。なんと、昼前には目を覚ますのだ! ほかの同族たちは一日中寝てることもある、・・・・・・と言うことを考えたならば、なんという働き者であろうか!

 目を覚ますと、部下が目の前で鈴生りになり見つめてきてるのは少々恐怖を覚える。だが、吾輩は最強である。寝込みを襲われたとしても、毛先にすらダメージを受けることはないであろう。これも是正しようと頑張ったが、無駄であった。なのでもう諦めたのである。

 目を覚まして最初に行うのは毛づくろいである。うむ、身だしなみは大事であるからな。魔法を使えば一瞬で終わる。え? 舐めて毛づくろいではないのか・・・・・・と? 貴様は唾液できれいになると本気で思うのか? ほかの同族ならばそれで済ませるかもしれぬが、吾輩は魔王である。魔王には魔王らしい身だしなみが必要であるとは思わんかね? 

 しっとりと濡れた、漆黒のビロードのような色艶、うむうむ、今日毛並みも絶好調である!

 お気に入りの、鮮血色に染め上げられた革地に金色の刺繍が施されたにブーツを履き、頭には宝石に彩られたきらびやかな王冠を乗せ、鮮血の様に真っ赤なマントを羽織れば準備は完了。今日も公務の始まりである。なに? 裸の魔王様だと? 猫魔は服なぞ着ない。自前の美しい毛並みが隠れてしまうではないか。この美しさも魔王の一つである! ・・・・・・と、昔々に吾輩が魔王として即位したときに、側近一同により決められてしまったのだ。部下の言葉を受け入れるのも、有能な上司というものだからな!

 

 魔王である吾輩の仕事量はとてつもなく多い。決裁書類は机からあふれ、執務室の床から天井に届くほどだ。だが、大丈夫だ問題ない。

 このような仕事量など、わが分身魔法で解決である。吾輩はあまりある魔力を使用することにより、72もの吾輩を生み出すことができるのだ。

 司令塔である吾輩以外は、皆『にゃ~にゃ~』としか話せないのが欠点だが、能力的には問題ない。執務室の壁がなぜかガラス張りになっており、部下たちが鈴なりになって見つめてくるのは少々恐怖を覚えるが、魔王の偉大さを見せつけるのに良いデモンストレーションなっていることだろう。 

  

 文字通り山の様になっていた書類も数時間で片が付く。うむ、やはり吾輩は有能である。今日は公務だけであったが、時には戦闘もある。吾輩を退治しようと勇者どもがやってくるからだ。だが吾輩は歴代最強の魔王。何の問題もない。


 仕事が終われば食事の時間。猫魔は小食なので一日一食。吾輩の身体を維持するにはこれで十分なのだ。魔力は周辺から集めれば良いのである。この吸魔の能力こそが、吾輩を魔王足らしめているものである。


 今日の食事はレインボーサーモンの刺身と照り焼き、グレイトボアの煮込みとマタタビ酒。やはり、一日の疲れを癒すのは、旨い食事とマタタビ酒に限る! 

 食事は書類の片付いた執務室でとるのが、吾輩の平常である。逆にいえば、片づけない限り食事はできないということである。ここ最近の魔族領は好調なのか、日増しに書類が増えていってるのだが・・・・・・。最初は分身魔法など使わなくても良い仕事量だったんだが。まぁ良い、今は目の前の食事だ。


『今日も酒がうみゃ~~にゃ!』


 はっ! いかんいかん、魔王にふさわしくない言葉を発してしまった。どうにもマタタビ酒は理性を狂わしてしまう。だがこれだけはどうにも止められぬ。

 食事の際もなぜか部下たちが、ガラス壁の向こう鈴生りになっているのだが、毎回見られているためか、すでに日常の光景である。魔王とは見られることも仕事のうちなのだな。

 給仕の者たちが鼻を抑えて肩を震わせておるのが少々気になるところだが。一度何らかの病気か? と聞いたのだが、笑顔で否定されてしまった。まぁ、大丈夫なのであれば問題ない。


 食事が終われば、身の回りの物を所定の位置に戻し、身だしなみを整える魔法を使い、就寝するだけである。

 寝床にはブラッシング係が待機しており、吾輩が眠るまで優しくブラシを当ててくれるのだ。


 お、おおぅ、ソコはだめだ。情けない声が漏れてしまうではないか! 

 あぁ、気持ちいいにゃ~。たまらにゃいにゃ~。本能ダダ漏れになっちゃうにゃ~。もうどうでもいいにゃ~・・・・・・。


 こうして吾輩の一日は終わるのである。

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