真面目な魔王様とゆるゆるな勇者様は今日も仲睦まじい
遊月奈喩多
第1話 勇者と魔王の伝説
遥かな昔、この世界は闇の勢力による侵食を受けていた。
闇の勢力を率いるは、大魔王ゼルファーディス。
地を割る咆哮、天を裂く爪牙を持ち、更に魔界の智の結晶とも謳われるほどの大魔導師でもあったゼルファーディスの野望の前に、多くの勇猛な戦士たちが何をすることもできずに
更に、ゼルファーディス自身に辿り着くことが困難でもあった。
彼を守る四魔王。
液体状の体を持った無定型の怪物、トルテュリオス。張り巡らされたその体にひと度触れたものは、体中の精気を全て吸われて、後に残るのは抜け殻となった骸のみである。
無双の剣士、ガイスト。本人の体躯は人間のそれと変わらないものの、山のように大きな大剣で軍勢を薙ぎ払い、運良く接近した勇士も、彼の持つ不可視の剣で知らぬ間に命を刈り取られる。
暗黒の魔導師、レヒト。ゼルファーディスすらも凌ぐ程の魔法で軍勢の攻守を司り、更にその杖のひと振りのみで人間たちの最高峰の魔道士たちが数人・数時間がかりで詠唱しなければならない呪文を発動させられるほどの魔力を誇る。
狂気の錬金術師、テレジア。四魔王の紅一点であるが、その実力はゼルファーディスに次ぐと言われており、ある程度の魔法や剣術はこなし、更に
誰もが絶望し、嘆いた。己の無力を。
誰もが渇望し、祈った。神の奇跡を。
そして、その祈りに答えるように、その人物は現れた。
眩しい光を纏いながら生まれてきたとも伝えられるその人物の名は、シュテリヒト。
誰よりも平和を愛し、人類を愛した彼は、頼りになる3人の仲間と共に魔王の軍勢と戦ったのである。
後の世に人類最高の英雄と語られる戦士、ハインリヒ。彼が向かうところに敵はなく、そして立ちはだかる壁など頑強な肉体のみで壊して突き進む。ガイストと互角以上の剣術を誇ったともいう。
類稀なる法力で人々と勇者一行を癒した聖女ルーナ。彼女の力にかかれば、瀕死の重傷すらもたちどころに癒され、また浄化の力はテレジアの創った不死身の兵団を退けたという。
冷静沈着、如何なる状況でも平常心を保った世界最高の魔術師、レヴナント。禁呪と呼ばれるいくつかの呪文を完全に制御下に置き、ゼルファーディスの力すら凌いだとも伝えられている、大魔王討伐の立役者でもある。
4人はそれぞれの力で四魔王を退け、最後には死力を尽くして大魔王すらも討ち果たした。平和になった世界で彼らは伝説の存在となり、脈々と伝えられることとなったのである。
だが、闇の勢力以外にも、この世界には様々な事象が起こる。
大規模な災害、異常気象、伝染病、人間同士の争い。それらが人類を脅かし、過去を省みることを奪っていくにつれて彼らの伝説は薄れ、そしてそれらが暫しの終息を迎えた頃には、かつて世界を二分したモノたちの記憶は完全に人々の中から消えてしまっていた。
そして、黙したまま時は流れ、その果てに。
神話が再現される……!!
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