第181話 サソリの一撃!核弾頭発射を阻止せよ!
思わぬ足止めを受けた
正しく戦場であらゆる汚れ役を熟すハイエナの俗称が相応しい、独立行動任務前提の機体である。
旧規格の
「こん……な!? 火星圏じゃありえないタイプの機体——一体それを何処から! 」
『申し訳ないがマドモアゼル。それは機密事項だよ。まあ、とあるお方が用立ててくれたとだけ語って置こうか。』
嘲笑とも増長とも言えぬしたり顔は、サソリの砲撃手へ不気味さを呼ぶ。
彼女をして、今まで出会った事のない強者であった。
曲がりなりにもサソリの砲撃手もかの漆黒が指揮する部隊以前から、フレーム乗りとして腕を鳴らして来たて
その彼女を変幻自在に手玉に取る飄々とした大尉は、火星圏でも稀に見る一級のフレーム乗りである。
一撃離脱を封じられた
核熱弾頭を搭載した強襲巡宙艦は確実に、廃ソシャールへの宙路を進んでいた。
「リューデちゃん、ユーからの通信はまだなの!? 何か向こうであったんじゃ——」
『はい~~。どうやら新手が、ユーテリスの離脱よりも早く迎撃に当たった様で~~。私としても想定外なのです~~。』
「そんな……火星圏のパイロットで、あの子をピンポイントで探し当てられる相手がいるなんて!? ユーっっ!! 」
順調であった核熱弾頭発射阻止作戦が、要となる超距離狙撃の停滞により立ち行かなくなる。
次第に増す
『私の持つニーズヘッグではシュミレート上~~威力がありすぎて~~、核熱兵器の誘爆を呼び兼ねないです~~。人死を出さぬ作戦としては、こちらも手詰りです~~。』
「ヨン姐、これ以上は持たない! 艦砲射撃を避けるばかりでは、機体のエネルギーが——」
「分かってる……分かってるわよ! でも今私達が止めなければ、あの核兵器が子供達を! 」
焦燥はかのアサシンシスターの心さえ浸蝕して行く。
誰よりも、破壊の権化の恐るべき惨状を知り得る者だからこそ……その焦りは強く激しかった。
尚も続く艦砲射撃の合間を縫い……強襲巡宙艦が——
遂に廃ソシャールを射程に捉えた。
「や……止めてーーーーーーーーっっっ!!! 」
見開く双眸。
脳裏を切り刻む惨劇の記憶。
アサシンシスターの悲痛の絶叫が、廃ソシャール宙域へ虚しく響き渡った。
「ようやくだ……さあこの露が完成させた破壊の炎——デモンストレーションの開始だっ!! 」
冷徹な女官が狂気を纏って宣言する。
巡宙艦の背後……謎の機影の一団が迫る中で——
》》》》
核熱弾頭が発射されるか否か。
それは
無数の閃状が、残る強襲巡宙艦へと降り注ぐや爆轟の華が咲く。
しかしそれは——
「いいか! ウチのお嬢の矜持に合わせろ! これより我らは反政府組織ではない——議長閣下を初めとした中央評議会の正式なる依頼を受けた組織……新生アンタレス・ニードルだっ! 」
『『『『アイアイ、サーっっ!! 』』』』
宙域へ現れたのはサソリ隊。
それも旗艦を中心に、機動兵装と高速艦からなる混成部隊。
総数は三十を数える一個中隊規模であった。
『よく持ちこたえたな。お嬢! ここからは我らも助太刀する! あの火星圏の飼い犬共を子供達の楽園から追い払うぞっ! 』
「……う、そ!? なんで……なんでみんなが! 火星政府に組織を解体されてたんじゃ——」
『胸を張れお嬢……これもお嬢達が議長閣下をお救いした結果だ! その閣下から、お嬢達がここへ戻ると極秘通信が届いてな——』
『ならばと閣下の令状を盾に取り、動ける全ての旧アンタレス・ニードル 志願兵を掻き集めて来た所だ! 』
それは奇跡。
あしながおじさんとして……尊敬と親愛を抱き続けた
僅か昔滅亡の憂いを味合わされたマルス星王国の——誇り高き意志を継ぐ革命志士達が馳せ参じたのだ。
程なく宴黙男の娘の高速艦へ、皆を集めた張本人……ソウマ・
そして――
「ソウマ叔父様! こんな所まで、よくぞ――」
「立派にやっていて何よりだ、お嬢。アンタレス・ニードルのリーダーを任せて正解だったな。だが再会の喜びはさて置き――」
「お嬢も今のままでは戦い辛かろう。故に持参してきたぞ?かつてより、アンタレス・ニードルリーダーが受け継ぐ代表者たる証。
「月光を……私に? 」
高速艦へ乗り込むや
その叔父より託されたるは、かつて反政府組織立ち上げの中心として地球は守護宗家企画立案の元生まれた機体。
戦国の世に民の安寧を求めて、武士の魂を
鎧武者をモチーフとした
想定さえしていなかった援軍に、感極まるアサシンシスター。
それを慰めつつ今は戦いの時と優しく諭す厳格なる叔父。
すでに戦場へ馳せ参じた同志の駆る機動兵装……絆を携えし同志ら用に
導かれた新たなる因果が、定めに挑む者達への合流を宣言したのだ。
「お嬢、これより我らは再び同じモノのために戦う同志だ。それも今までの様に政府の目から逃げ隠れしながらではない——」
「
「叔父……様。」
力無き子供達のため……かつての星王国の意思を継ぐ者としては異方者であるも、その存在に価値を見出し戦ったかつての組織協力者たる父の意思を継ぎ——
シスターは新たな時代の革命者を纏める者へと推し出された。
「お嬢……これよりが、お嬢達の時代。さあ、前に進む時だ。」
無骨ながらも逞しい手がシスターの頭をそっと撫で上げる。
もはや言葉など不要であった。
着込むパイロットスーツのまま、アサシンシスターはリーダーの証たる
それに呼応した機体が、これより戦場に
鎧武者を模した甲冑型多重装甲と、その重装甲を容易く振り回す強力な
備わる武装は、単発式だが一撃の攻撃力に勝る速射式徹甲弾を打ち出すロングライフル。
意匠の関係で火縄銃を連想させるそれを背に、腰に
地上でも密かに日本は宗家が有する
『ヨン姐はユー姐の援護を! こっちはソウマ様を乗せて、ウチの旗艦と合流する! 同志の皆が乗って来たアレは、議長閣下傘下のフレーム積載型 航宙母艦〈
『つまりは今こそ、デイチェ達アンタレス・ニードルの正式なる旗揚げだよ! 』
モニター越しにそれを確認したアサシンシスターは首肯するや……気焔を上げて飛ぶ。
想定外の
かつて反政府組織を最後まで引き連れた、〈双子の闇サソリ〉の新たなる再起に向けて——
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