第30話 蒼と赤を司る女神達
「あの機体は
「油断できないわよっ!」
私はこの
思えばこんな少年が、【
機体コンセプトはともかく、一介の学生が戦場に出る事は地上――日本出身の自分としては想像も出来ない。
少なくともC・T・Oに配属され、
けどその時はすでに、
何でもその腕に治療不能な程の大怪我を負い、格闘家生命に支障が出た事が原因とされているが、私も詳しくは知り得ない。
天才格闘家と言われた総師範――その名を継ぐ者が
――
名のある実力者に敗北した、負け犬だったから――
強襲者を前に過去への感傷に浸るのは止めよう。
訪れたミッション――今は出来る事に集中、私が受け持つ格闘少年のバックアップに全力を尽くす。
少なくとも私が望んでこの場所を選んだんだ。
自分の中にある気持ちを、例え偽ってでもベストで望む。
「
「これも修練の内――耐えて見せなさい!」
自分でも何を偉そうにと歯がゆくなる。
けど心を押し殺し、
『了解ッス!
最初はあの戦狼と相対するだけで
再び襲来した、先の戦闘を上回る力を手に入れた戦狼と、外部スラスターと言う慣れない装備で迎え撃つ少年。
その恐ろしい成長速度は、私の心へ小さな棘を打ち込んでいた。
》》》》
すでに到着した敵の増援に、赤と蒼の騎士が接敵――激しい交戦状態へ突入していた。
不可視の狩人が早々に撤退したとは言え、むしろ状況は今の方が
「敵隊長機及び砲撃手の機体は、修理と改修こそ行っていますが――それでもこちらの【
例によって例の如く、オタクパワー全開少女の
流石に自重を願いたい程の機械オタクぶりである。
「バーゾベルが要するフレーム搭載能力では、それが限界だろう――だが少なくとも、【アル・カンデ】襲撃時よりは戦力的にみても充実させて来たな!」
現在交戦中の敵勢力、各機体データが複数のパネルモニターへ投影――そこよりすかさず状況分析を終える指令
【ザガー・カルツ】隊長機――エイワス・ヒュビネットの搭乗するは、クロント・ボンホース私設部隊でも標準とされる機体〈ディザード・マイスターズ〉。
大破後大幅な強化改修が施されてはいるが、外見上での著しい機体性能向上は無く、あくまで強化に止められている。
指揮官機としての兵装に追加された強化カスタムによって、推進力と火力上昇が見られるくらいか。
砲撃手が駆るのは〈ディザード・ランチャー=
重火線砲主体であるのは変わらず、こちらも推進力強化が見える。
それらのデータより――戦狼を赤きフレームへ張り付かせ、残りは蒼きフレームへ向かわせる戦略と取れる。
【ザガー・カルツ】の戦力との戦力差は、一見
しかし、敵対者は戦略的な破壊行動を目的としているのに対し――
その状況もあり現実的には戦力が劣っているはずの敵対者と、実質均衡が取れていると言わざるをえないのだ。
「管制官!【マス・ドライブ・サーキット】のエネルギー充填率はどうだ!」
『こちら
管制塔への通信により現状確認―― 一分一秒を争う状況。
その中にあって【
まさに蒼と赤の機体頼みの防衛戦である。
指令同様、ブリッジクルー――さらには、手を
この衛星【カリスト】を超えられなければ、まさに何も始まらない―― 一身一対の防衛戦が時間だけを刻々と削り取って行くのだった。
》》》》
最初は誰もに無謀と
ううん――きっと
けど地球と言う、この
だから、ただがむしゃらに――自分は夢に向かって進んでいると言い聞かせ、Ωと言う機体に関わる任務をこなして来た。
そんな中、念願のC・T・Oに配属されて耳にした噂。
何も知らない私は、その英雄の武勇を聞き、打ち震え――もう
「クオンさん!やっぱり現状のリアクター安定状況は低迷――今発動出来る機体出力は、木星及びカリストの潮汐力が影響し推定最大出力の60%を下回ります!」
「了解した!ジーナ、引き続き出力特性のデータ記録を頼む!」
極めて不安定な機体出力――目を放せば、途端に各位相でゲージ粒子のバラつきが生じ、同位相でのエネルギー伝達不良が発生する。
四大元素との別名を持つ【
それが最大出力の60%を下回る現状、本当によく動かせているものだと感嘆を覚える。
きっと自分とこの蒼き英雄は、そもそも住む世界が違っていたのだろう――思考で無理矢理納得させながら任務に当たる。
そう――今はただ任務に全力を賭さなければ、中央評議会のあるセレスにさえ
眼前の
その変化を余す事無く情報として蓄積するため、思考と視線が舞い躍る。
たった60%に満たぬ出力でさえ、この機体は雷光を後塵とし――
まだ【
ほんの少しの身体の変調すら気付かぬ程に――
》》》》
猛然と宇宙を駆ける
装甲が滑らかな曲線と、鋭い直線で形成される双振りの豪腕。
我流とは言え、戦狼のボクシングに近似する格闘スタイルによって、その豪腕は近接から打ち込まれる戦艦の主砲の
「(くっ!?この機体、とんでもない――撃ち負ければ、軽く関節ごと腕を持って行かれる!)」
「(
思考でパートナーの無茶振りに愚痴を零しながらも、その動きは赤き機体の腕部より一回り大きな戦艦の主砲を連想させる拳撃――それを寸ででかわし続ける。
【
拳を一つ戦狼へ撃ち込み――戦狼の一撃を一ついなす度、開いていた機体との感覚の距離が縮まるのを少年は感じていた。
『どうした赤いの!ちったぁこなれて来たって奴か!?――その調子で俺を楽しませてみせろっっ!!』
戦狼の
その視界の先――距離にして1000と弱。
蒼き軌跡が雷光の様に
大破後の改修で大幅な強化を受けるも、僅かに
結果――敵部隊との戦力的な均衡が取れると言う、皮肉な現状を生み出していた。
交戦が泥沼化の様そうを
半物質化された電磁レールが、輝きの最高潮へ至る――それを待ちわびた者が、来た!とばかりに通信担当の少女へ命を飛ばした。
「頃合だっ!各【
「了解しました!」
指令の指示はすぐさま通信オペレーター、
『【
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