堕ちた作家は死して夢を見る

Laziness

過去と始まり

アイディール文庫

【アイディール文庫】

多数のアニメ化・映画化の小説を発刊した、伝説の文庫だ。

2015年の今、20周年を迎えた。

強力なラノベレーベルである、雷撃文庫。他にも、作品を幅広く扱う、角山文庫。

この2つを吸収した、かなりの大型文庫である。

よって、ライトノベルから官能小説に至るまで、幅広い作品を取り扱っている。


…その巨大さに加え、そこにはもう一つ、話題に挙げなければならないことがある。


新人賞の入賞が難しすぎるということだ。


いや、普通そんなもんでしょ。と言われるかもしれない。


だがしかし、とにかくここはハードルが高すぎるのだ。


まず、選考自体は年に1回。選考は5段階に分けられる。

そして…入賞の栄誉を賜れるのは…


たった2人。


大賞が1人と、特別賞が1人。

それぞれ、1500万円と、500万円の賞金が支払われる。

しかも、その選考の厳しすぎる故、当選すれば後の人生安泰と言われている。


さて、ではそれに入賞した1人の作家の話をしよう。





2015年、年に一回の選考である。


今年の応募は、およそ8500だった。

少し前は、あまりにも応募が多く、応募の条件をかなり厳しくすることになった。

お陰で、4桁まで応募を減らすことは出来た。


だが、大変なものは大変だ。その8500の1つ1つに、作者の情熱が詰まっている。

磨き上げられた8500の中から、特に輝く2を見つける。

その地獄と形容しても過言ではない、そんな鬼畜作業が始まった。





選考において、担当者は冷酷な感情を持たなければならない。


否、感情を捨てなければならない。


そう、担当者は作品を一歩引いて読まなければならないのだ。


1つの作品に酔う、1つの作品に感情を過度に移入する。


そんなことは、決して許されない。


作者が全力で考えた世界。発想を詰め込んだ設定。そして、何度も練られ、破却されたキャラ。



その全てを、否定的に見つめる。

担当者は、その作品の良さではなく【悪さ】を探す。


何故かって。それは受験と同じである。


受からせるのではなく、落とすために選考をするのだ。


輝く8500の良さを見つめれば、それに終わりは無い。


ならばと、悪さを探し、突き、そして落とす。否、堕とす。



その冷酷かつ、希望が散る場で・・






涙が、流れた。



人の感動表現の果て、【落涙】だった。


涙を流しながら、彼らは言った。


『これは、伝説になる』と。




最早その瞬間、その作品の勝利は確定であった。


その作品は…


12歳の少年による作品だった。




その当選の瞬間…



アイディールの伝説が幕を開けた。


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