美容室とわたし。

朱桜由夏

スカウト


事の発端は8月末の美容室での一言だった。


「ねえ、あなた。ここで働かない?」


「……………………はっ?」





舞台の関係で金髪になり、特に髪色を戻す理由もなくしばらく放っておいたらちょうどカラメルとカスタードの割合が美味しそうなプリン状態になってしまった。


さすがにこの状態でアルバイトなんて出来るはずもなく、染め直そうついでに髪を切ろうと重い腰を上げて美容室に出向いた。


それが運命だったのかそれとも悪夢の始まりだったのか。


「あなた、髪の毛触られても壁を感じないし、話も苦手そうじゃないし、このブリーチ自分でやったんでしょ?」


「いや、友達にやってもらって。でも美容系の勉強も何もやってないですし、お邪魔になるだけかと。」


「でもこの色じゃどこも雇ってくれないでしょ?うちなら美容室だから何色にしてもいいし、私服で働けるよ。お洋服とか髪色コロコロ変えるのとか好きそう!」


「あっはい。好きですね。めっちゃ。」


「じゃあ面接しましょう!明日朝9時にここに来てもらえる?これね、私運命だと思うの。私人事担当で、たまたま私があなたを担当して、いいなぁって思ったから声をかけたの。もし、嫌だったら断ってくれてもいいんだけどね。その時は私のこの運命だと思ったのは勘違いだったってだけで。」


とすごいキャラが濃いこの人がマネージャーの黒井さんだった。

正直断ってもよかったけど、私のおしゃれ染めの誘惑への弱さ故に黒髪に戻さなかった+私服で靴も何もかも自由なのが決め手だった。

役作りで髪色が変わるし、インナーカラー・メッシュもやりたい派手髪大好き人間の私が靡かないはずがなかったのだ。



そして翌日、履歴書を持ってほぼ働くことが決まってるような面接に出向いたのであった。


「本日から働くことになりました。朱桜由夏です。美容関係の勉強は一切してないので何もわからない状態ですが、精一杯覚えて頑張りますのでよろしくお願いします!」

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美容室とわたし。 朱桜由夏 @eggmilk27

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