24.修学旅行へ行こう!

第85話 修学旅行の季節

 文化祭も終わり、季節は本格的に秋を迎え、俺たち二年生は修学旅行へと出発した。


「楽しみだね」


 バスで隣の席に座った小鳥遊が笑いかけてくる。


「ああ、そうだな」


 行先は定番の京都と奈良、そして大阪。


 そういえば、前の世界では九月に修学旅行に行く予定だったけど、七月にこっちの世界に来たから、結局修学旅行には行けなかったんだよな。


 高校に入って初めての修学旅行、楽しみだな!


 一日目の行先は奈良。大仏や奈良公園を見る予定だ。大仏には興味無いけど、鹿はよくテレビなんかでも見るし、ちょっと楽しみだな。


「みなさん、ここが奈良公園です。ここの鹿は意外と凶暴なので、お弁当やお菓子を盗られないように注意してくださいね」


 茶髪のウェーブヘアーの美人なバスガイドさんが案内してくれる。


 おっ、このバスガイドさん、かなり好みだな。胸も大きいし、お尻も安産型。顔もおっとり癒し系で、他のクラスのバスガイドと比べて断然可愛い!


「ぐへへへへ、お姉さん、何歳でござるか? 彼氏は――付き合っている殿方は居るでござるか!?」


 山田がバスガイドさんを質問攻めし始める。


 こいつ、相変わらず俺と女の趣味が一緒でやがる。


「山田ーっ、何してんのさっさと行くよ!」


 早速、後ろから渡辺さんがやってきて、山田は羽交い締めにされてるけど。


 渡辺さん、ナイス!


「あーれー! は、離すでござる!!」


 渡辺さんに無理矢理引きずられていく山田。相変わらず尻に敷かれてるな。


「武田くん」

「タツヤ」


 俺が山田に気を取られていると、桃園さんとユウちゃんに声をかけられる。


「ん? どうしたの?」


「武田くん、ミカンちゃん知りませんか?」

「さっきから、いない」


「え? どこ行ったんだろう」


 キョロキョロと辺りを見回していると、遠くから悲鳴が聞こえてきた。


「キャーッ、た、たすけてーっ!」


 いやな予感。俺たちは顔を見合せた。


「今の声……」

「ミカンちゃんですね」

「だね」


 三人で駆けつけると、やはり予想通り、ミカンが鹿に襲われていた。


「いやあああーっ! 放してっ、放しなさいよっ!」


 鹿にスカートをあむあむ噛まれ、パンツ丸出しになっているミカン。もはやパンチラではなくパンモロである。


「ミカンちゃん、大丈夫で――きゃあっ!」

「ひゃあっ!?」


 更には助けに入ろうとした桃園さんとユウちゃんまで鹿に襲われる始末。


「やぁんっ、やめてくださいーっ!」


 鹿にスカートをめくられ、桃園さんの白いムチムチした太ももがあらわになる。


 なんだこのエロ鹿。美少女ばかり狙ってないか!?


 俺は助けに入ろうとしたけど、ツノでブンブン攻撃され近づけない。ツノは切られていて短いとはいえ、野生動物の迫力はすごい。


「みんなー! 鹿せんべい、買ってきたよー!」


 小鳥遊が大量の鹿せんべいを手に走ってくる。


「てやっ!」


 小鳥遊がせんべいを投げると、鹿はパッと女子のスカートをめくるのをやめてせんべいに群がった。


「ふう、助かった……」

「助かりました、小鳥遊くん」

「ありがと」


 女子たちに感謝される小鳥遊。さすがは主人公。


「いやあ、親友の武田くんを守るためだからね」


 キラキラとしたイケメンスマイルを俺に向けてくる小鳥遊。


「お、おう……」


 すると遠くから、どこかで聞き覚えのある叫び声が響いてきた。


「や、やめるでござるー! 拙者のズボンはせんべいじゃないでござるー! ブリーフは、ブリーフだけは勘弁を……!!」


 どうやら鹿が美少女だけを襲うというのは俺の勘違いだったらしい。すまん、鹿。風評被害だった。


 こうして修学旅行一日目が終わり、俺たちは宿泊先のホテルに泊まることになった。


 いよいよ明日は京都で自由行動だ。楽しみだなあ。


「はー、さっぱりした」


 俺がホテルの大浴場の前で小鳥遊が出てくるのを待っていると、女子の風呂の方からお風呂から上がったばかりの桃園さんがやってきた。


「武田くん。お風呂上がったんですか?」


 ……お、おおっ、お風呂上がりの桃園さん!


 髪の毛は濡れてペちょんとしてるし、なんかいい匂いがするし、白い肌はお風呂で赤く染まっていて――何ともエロい!


 それに、薄ピンク色のTシャツとジャージを来てるけど、その下はお風呂上がりだからたぶんノーブラ……だよな。


 や、やばい。考えただけで興奮してきた。


「あ、ああ。俺、長風呂って苦手で、先に上がったから、牛乳飲みながら小鳥遊のこと待ってるんだ」


 慌てて手に持った牛乳に視線を移す。


「そうなんですね。相変わらず、仲が良いんですね」


 笑いかけてくる桃園さん。


「ところで武田くんたちは、明日の自由行動はどこへ行くんですか?」


「ん、まあ、普通の定番コースだよ。金閣寺とか、清水寺とか」


「そうですか。じゃあ明日の自由行動、偶然ばったり会うかもしれませんね」


「ああ、そうだな」


 偶然……ね。


 実を言うと、桃園さん達が行くコースは事前に知っていたから、わざと同じにしたんだけどな。


 良く考えたら、二人が付き合い初めてから初めてのイベントらしいイベントだ。


 ふふ、明日の自由行動、楽しみだな!

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