遥火と大金持ちの城
@b060959
第1話
フランドル国の東南。下流・中流階級の住まう農業地帯で、例に漏れず農業を営んでいた
それから一週間が経ち、二週間が経った。しかし、そのときになってもなお、亡くなった夫妻の子供たちは三人揃って元の家にいた。そしてそのことが村人の、また子供たちの悩みの種だった。長男は十七歳、長女は十五歳、次女は十四歳の子供たち三人。働けない歳ではなかったが、とてもこのまま農業で生活していくことはできない。養い親が必要だった。
しかし、三人の引き取り先を探す村役場の職員が心底困ったことに、夫妻には極端に親戚が少なかったのである。まず父親の真の方は論外だった。彼は遠く離れた、それこそ地球の反対側にある日本という国からの移住者だった。村の中には一人として彼の親族への連絡手段を持っている者はいなかった。たとえそれを役場が突き止めたとしても、フランドル生まれフランドル育ちの、日本語などまるっきりできない子供たち三人だ。彼らをそんな異国へ送ってしまう情け知らずなこともできない相談だった。
そうすると、残るは母方の親族だ。マサラは生まれも育ちもフランドルで、この国をいたく気に入って移住してきた真と二十年前に恋に落ち、結婚した。彼女の両親はすでに他界しており、兄弟もいない。村役場が持てる限りの人脈と
十五歳の
「なに、これ…」
思わずつぶやきが漏れた。
目の前にそびえ立つのは、見たこともないほど巨大な門扉。
そして、驚きは遠くに目をやるほどに大きくなっていく。門の後ろに広がった光景を、
思いっきり優美に整えられた庭だ。
しかしこの整いすぎた庭も、さらにその奥にあるものに比べたらなんでもないものだった。
――ばかでっかい屋敷…いや、もしかすると、城?
思ってみるとまさにぴったりだった。横に長く、窓がたくさんある様子は学校に似ていたが、比較にならないほど大きい。だいたい、学校は木でできていたが、この建物の壁は輝くばかりの白で、屋根は青だ。おまけに、その隣には円柱型のこれまた窓のたくさんある建物があり、尖塔がいくつも飛び出している姿は、王冠そっくりに見える。
挨拶が終わると、門番は遥火に後についてくるように告げて、門を越えて歩き出した。
門番についてひたすらまっすぐ歩きながら、
遥火はごくりと
それから五分も歩くと、目の前にひときわ大きな噴水が現れた。そしてその前に立っていた少し猫背気味の男に、遥火は引き渡された。門番は白く飾り気のない服を着ていた(それでも
服装からするに執事だろうか、と
――この人、あたしの汚さにびびってるんだわ…。
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