押間家の押しまくれ恋愛論
スライム
押間家恋愛論・1
押間家は、その地域では少しばかり有名な家族だった。三世代で一つの大きなお屋敷に住み、皆どこか浮世離れした美しさを感じさせた。そんな押間家の最大の特徴は、何と言っても「恋愛面においての押しの強さ」だったのである。
押間家の女性で3番目に若い 押間
(どうしましょう…)
普段は女王のように凛と振る舞い、一年にもかかわらず生徒会役員として活動し、女子を中心に人気と尊敬を集めている紅が困り果てている姿はレアもレア。SSSR+である。そんな彼女がなぜここまで慌てているのかというと、単純明快。落し物の捜索である。
(教室、生徒会室、今日移動した教室も、教員預かりの落し物コーナーも全て確認済み。それでも見つからないなんて…。)
「…あの。」
(せっかくお祖母様にいただいた鏡なのに!でも落としたということは、もしかすると割れてしまったかもしれない。)
「押間さん?」
(割れてしまって破片が飛び散っていたら大変だからと片付けられてしまったのかも。それならどこにも無いのは納得だわ。)
「聞こえてますかー」
(とにかく、お祖母様にはどう謝ろうかしら?あ、でも待って。あの鏡はスライドミラーだから、カバーが守ってくれて運良く無事かもしれない!)
「ちょっとー」
「そうと決まれば、やはりもう1度探す他ないわね」
「うおっ」
「えっ」
人通りの少ない廊下の真ん中でしゃがみ込んでいた紅が勢いよく立ち上がると、それに驚く声。あらやだいけない私としたことが、と振り返ると、思っていたよりも近くに男子生徒の顔があった。
「押間さん、あのですね」
「え、えぇ。何か御用かしら?」
「落し物を届けに来たんです」
「あら、了解したわ。私から先生方の誰かに預けて落とし主を探していただけるようにしておくから…」
「あ、いえ。その必要はないです。あなたの落し物だと思う…ので。」
男子がポケットを探り、出てきたのはまさしく自分が今の今まで探していた鏡。
「それ!一体どこで!?」
「昼に急いでどこかへ向かわれる最中、俺の前を通った時に書類を持つ腕の間から落とされてましたよ」
「そうだったの…。わざわざこんな時間にこんな所までありがとう。」
「いえ、大丈夫です。」
この学校では、学年毎にテーマカラーがある。二年は青、三年は緑で、紅たち一年は赤なのだが、それを示すのは全員着用のネクタイピンである。それを見るに、彼も自分と同じく一年らしい。
「あなた同級生でしょう?なぜ敬語なの?」
「いや、そっちは一年のスーパー役員様ですし。俺なんてただの一般生徒ですから」
「そんなの要らないわ。同級生の間に上下関係なんておかしいじゃない。」
「そう?そっちがいいならいいけど」
「そうしてちょうだい。あ、お名前は?」
「
「もうご存知かもしれないけど、私は押間 紅。今日は本当にありがとう。これを機に仲良くしてくれたら嬉しいわ」
「え、うん。俺なんかでいいなら、喜んで。」
そういってはにかむ木塚くん。
きゅん。
…あら?
押間家恋愛論、その1。
「初対面時には、必ず名前を聞きましょう」
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