第175話 一番大事(1)

彼の勢いに気おされるように夏希はどんどんどんどん体を引いてしまったが、


それを許さないように頭を抱えられた。


こわ・・。


思わず彼の腕をぎゅうううっと掴んでしまった。


またすごい力で。


爪が食い込みそうなくらいの力だったが、高宮は痛みを感じながらも負けたくないと思いキスをし続けた。



たまに唇を離しながら



何度も


何度も。



「ん・・」


苦しくて声が漏れる。


そのうち


どんどんと目が回ってきた。


彼の腕を掴んでいた力が抜けて


ふうっと体の力も抜けてしまった。



ん?


彼女の異変に気づいた高宮は彼女から唇を離した。


そのとたん、グラっとベッドに倒れてしまった。



「ど、どうしたの・・」


「もう・・いっぱいいっぱいです・・」


蚊の泣くような声でそう言った。


「も、もういっぱいいっぱいなの??」


高宮は焦った。



まだ


キスしかしてないのに?


容量、少ないんだなァ・・


もう。



呆れながらも、


明日からまた離れ離れだと思うと気持ちが止められない。



ベッドで仰向けに伸びている夏希の胸の上にあった手を解いた。


「へ・・」


口がぽかんと開きっぱなしになった。



「ごめん・・」


高宮は彼女にそう言ってから、右手のひらを彼女の左胸の上に置いた。




「○×@$#%&▲◇!!!!!!」


文字化けするほど


驚いた・・。



そして彼は彼女の体に自分の身を静かに沈めた。



もう


体が


金属になってゆく・・。



夏希は固まってしまった。



彼女の胸は


見た目よりもずっと豊満で。


やわらかくて。


そっと首筋にキスをしてしまった。




「・・・!!!」



今までに感じたことのない


身震いするような感覚が体中を襲った。



彼の手が


ゆっくりと動く。


「・・んっ・・」



夏希は唇をぎゅっとかみ締めて、目もぎゅっとつぶって。


顔を背けるようにこの何とも言えない気持ちに耐えていた。



そんな


彼女の顔を見たら。



高宮はふうっとその手を遠ざけた。



え・・?


夏希はそっと目を開けた。


彼が優しく微笑んでいる。


「ごめんね。」



高宮はそう言って彼女の少し乱れた胸元を直してやった。


「たっ・・高宮さん。」


夏希は慌てて起き上がった。


「まだ。 そういう段階ではないなァ・・」


苦笑いをする彼に、


「え、」


夏希は彼の顔を見る。



「そんな、気がする。」


恥ずかしくてカアっと顔が赤くなった。


「あっ、あたしが・・ほんとに・・コドモだから・・」


「おれは、きみにどう思われてるか知らないけど。 正直、こういうことそんなには経験ないし。 ぜんっぜん威張れないんだけど。」


高宮は恥ずかしそうに背を向けながら言う。



「無理にしたくないって思いながらも。 きみに触れたいって思ってしまう・・」



見た目は


すっごい派手そうなのに。


そんなに経験ないって


ホントかな・・。



夏希はぼんやりとそう思いながら、



でも


すっごく・・大事にしてくれてる。



それだけは


痛いほど伝わってきた。

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