第78話 夏休み(2)
「えー! マジ?? すっげ、さすが加瀬やなあ、」
志藤はのけぞって大笑いした。
「おれ以上のヤツがいたなあ、」
八神も大ウケだった。
「コロンビア大学を知らない人がいる、というカルチャーショックを受けてしまって、」
高宮は笑いもせず、冷静に言った。
「はあああ、それでおまえのそのチョモランマのような高い高いプライドを加瀬はダイナマイトで一瞬にして破壊してしまったんやな。 んで、ハートをわしづかみにされてもうたんや、」
ちょっと図星を指されて、
「や、そういうわけでも。」
高宮は口ごもった。
すると八神がものすごく食いついて、
「ほんっとおれ一度聞きたかったんだけど! 加瀬のどこがいいの? すっげ興味ある!」
身を乗り出した。
「どこがって、」
「え~~、もっとゆっくり話を聞きたいなぁ。 ね、志藤さん、これからゴハン行きましょうよ、ね?」
もう野次馬根性ミエミエで。
「いいですよ、別に、」
高宮はロコツに嫌そうな顔をして拒否した。
「ま・・おれも明日から京都帰るけど、もう仕事も終わるし。 ちょっと行くか。 この今世紀最大のナゾを解き明かしに、」
志藤までそんなことを言い出し・・。
「そうと決まったら、もう終わりにして~、」
八神は嬉しそうに片付け始める。
「…セーブを忘れずに、」
高宮はそんな彼にボソっと言った。
『新月』はお盆中ではあったが営業していた。
「まあまあ、飲んで飲んで。」
八神は前回、高宮が酒を飲んでおもしろくなったので、いろんな企みを抱きながら彼に酒を勧める。
「ほんっと。あなたって頭の中がダダもれですね、」
高宮の言葉に、
「八神はもう本能が服着て歩いてる男やから。 動揺するとすぐに顔に出るし。 ババぬきが絶対にでけへんタイプやもん。 そういうところは加瀬と似てるな、」
志藤は笑った。
まあ、
それは否定できないけど。
「加瀬は。そういえば休んでるんですか?」
八神がようやく気づいたように言うと、
「今日から3日間、お盆休みで実家に帰っています、」
高宮が説明した。
「ああ、もうスケジュールとかも把握してるんだあ。」
八神はニヤニヤと笑う。
「何か、誤解をしているようなのですが。 おれは加瀬さんとはつきあってるわけではないので、」
一応断っておきたかった。
「え? そうなの? 二人でサーフィンとか行っちゃってるんだろ?」
「行っているだけですから。 残念ながら。」
と遠くを見た。
「な? こいつのが加瀬にゾッコンやねん。 笑うやろ~~?」
志藤がからかったので、
「笑うとこじゃないと思いますけど???」
高宮はキッと彼を睨んだ。
八神の企みのまま飲んでたまるか、と思ったが、少しヤケになったグラスのビールを一気に飲み干した。
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