第4話 始動(4)

まただ…。


高宮はちっと舌打ちをして、


「またぼくのところにDMが混じってましたよ。 キャバ嬢の、」

後ろの窓際の席に座る志藤にそのハガキを手渡した。


「え? あ~、ごめんごめん。」

ツメにヤスリをかけながら志藤はそれを見た。


「ルナちゃんか。 しばらく行ってないもんな~。」


高宮はそのハガキを投げ捨てるように彼のデスクに置くと、


「会社にこんなもん送らせないで下さい! この前はオカマバーからのハガキだったし!」

ものすごい怖い顔で彼に言った。


「おまえ。こんなの自宅に送らせるアホがどこの世界におんねん。 ヨメに見つかったらどうする!」

逆ギレとも思える発言に、


「だいたい。 あなた取締役でしょ? それなのに他の会社のOLとランチ合コンに行ったり! 社内の女子社員に混じってお茶したり!」


そんな彼を見て、

「おまえは…何を怒ってるねん、」

志藤が冷静に返したのがまた腹立たしく、高宮はずんずんと部屋を出てしまった。



今度からDMは事業部のほうに送ってもらうことにしよう。

ほんま秘書課っていづらい…。


志藤はそう反省した。


彼と入れ替わるようにして、

「どうしたんですか? 高宮くんがすごい顔で出て行きましたよ、」


専務で社長の息子である北都真太郎が入って来た。



「さあ。」

志藤は切ったツメを丁寧にティッシュに包んで捨てた。


「それにしても。 なんであいつこんなトコで働いてるんでしょうねえ。」


「高宮ですか?」


「だって。 オヤジさんは元財務大臣で現職の国会議員で。 あいつ長男なんでしょ? 政治家にならなくていいんですかねえ。」


「たまにその話をすると機嫌悪くなっちゃって。」

真太郎はため息をついた。


「社長が拾ってきたんでしょ?」


「コロンビア大学にいる時に、NYの北都グループの関連会社でバイトしてたんです。 それを社長が見初めた、と言うか。」


「しかも大学院まで出てるらしいじゃないですか。 わっからへん。 めちゃくちゃナマイキなところも腹立つんですけど、」

志藤は鏡を見て髪を直した。


「まだここに来て1年だし。 ぼくもよくわからないところがあります、」


「しかも、ちょっとばっかし顔がいいとこも腹立つんですけど、」


志藤の言い分に真太郎は思わず吹き出してしまった。

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