第28話
……なんだか、今更だけど見てたら申し訳なくなってきた。
ステレオタイプな巫女服は
は? 『その辺もっとkwsk!!』? 『お前服の下がどうなってんのか分かんだろ!?』? 『和服って事はやっぱり――!?』?
いやまあ、巫女服の下は刃物とか鈍器どころか首を括れそうな紐だの布切れだのなんかも含めた『武器になりそうな物』なんて何も無いけど、それってこの状況で重要な事?
ついでに言えば、他の連中も似たようなもんだけど? これで満足?
……ゴフン、取り敢えずこのまま巫女さんから諸々聞き出せれば面倒な探し物をせずに済むんだから、ココは気を引き締め直さねえとな。さっきみたいにナメられたら面倒だ。
っても、何から聞くべきか……迷ったオレは、ふと周りにまだ漂ってる黒い霧を見付けて、最初の質問を決めた。
「そうだな、まず……アンタはこの黒いのが見えてるのか?」
「、はい、見えております」
緊張の所為か微妙につっかえながらの返事は首肯と肯定だった。
って事は、やっぱり魔力ソナーが見えてたから、コイツらは最初っから警戒してたワケね。
でも、縄文時代の時は誰も反応してなかったが……
「コレは誰にでも見えるもんなのか?」
「い、いえ、一部の者にしか見えませんし、扱えません」
「その一部ってのはどんな人間の事だ?」
「う、生まれ付き神霊と通じられる適性を持つ者や、徳を積み重ねて解脱に至らんと魂を研磨する者、術を学び陰陽の道を探求する者などです」
「フム……って事は、それ以外の――例えば、そこで伸びてる武士連中とか、その辺の農民さんとかには見えてないって事か?」
「は、はい、仰る通りに御座います」
……自分で要求しといてアレだけど、ウミガメのスープ問題とか心が読める(考えが読めるとは言っていない)スタ○ドとかみてえに一々質問を重ねなくちゃならねえのは面倒だな。
いやね、巫女さんの気持ちも分からなくはねえんだよ?
そりゃあ、目の前で仲間を蹂躙して見せたヤツの御機嫌取りをさせられてるって状況で『無駄話はするな』なんて条件で質問攻めにされれば、必然的に答えは最小限になっちまうってもんだ。
だからまあ、『気が利かない』とか『どんくさい』とか、そんな理不尽な文句を口に出す気なんてねえさ。オレは寛容だからな。
でもま、幾ら水に流せるっつっても一応は刃傷沙汰だし、動機の確認くらいはしとこうかね。
どうせ大方の予想通りに、さっき見た
「ふ~ん……じゃあ、アンタらはなんでいきなり襲ってきたんだ? テメエらが何を目的にして
「――えっ!? じゅ、十四……!? 御身が!?」
オイ、なんでそこで驚くんだ?
オレなんて、どっからどう見てもその辺に居る普通の中学生だろ――とツッコもうとして、正座する巫女さんの頭蓋骨へ伸びようとしていた真っ黒い腕が視界に入った。
……アレ? そう言や、オレっていつから変身してたんだ?
いや、自分でもマヌケだと思うし、思い返してみれば黒くなった手足が何度も視界に入ってたんだが、オレは今の今までテメエが変身してたって意識できてなかったんだ。
まあ、
ついでに、
「ああ、悪かった。こんな恰好じゃあそう思って当然だな……っと、コレでどうだ?」
変身体の維持に費やしていた魔力の供給を切ると、一拍後にはフッと空気に溶けるようにして黒鱗が掻き消え、その下の生まれ持った人間の肉体が露わになる。
魔力供給切ったってだけで意識的に解除したワケじゃねえのに消えるとか……やっぱ、
「――――っ!?!!!!」
変身体が消えるって事は角や翼は勿論、武器や甲冑を持っていた尻尾も消えるワケで、オレの背後でガシャガシャと硬質な効果音が重なって――って、なんだよ巫女さん? んなマジマジとコッチ見て。
なんか、心臓の鼓動もさっきまでより一層速くなってるし、
と、そんな意図の視線を受け、手で包むように赤くなった顔を隠した巫女さんも自分のシツレイな態度に思い当たった――ワケじゃなさそうだ。
指を閉じてキッチリと目を隠してるように見せて、その実、指の関節で生じた隙間から零れる視線でジロジロと舐め回してきやがる。
ンニャロウ、やっぱフザケてんだろ……
「……なんだよ? なんか言いたい事でもあんのか?」
「――っや、そ、き、き着物!! な、何故なにも御召していらっしゃらないのですか!??!!!」
「……はあ? そんなの――」
――
こんな事を言って聞かせた所で、常識ハズレなのはどう見てもオレの方だ。
今までずっとこのスタイルだったから指摘されるまで忘れてたが、ZENRAは古今東西ドコでも非常識だよな、うん。
それに、巫女さんにしても文句があるのは服を着てない理由についてじゃなくて裸を見せられてる事についてだろうから、この状態で何を言ってもムダだろうて。
そんなワケで『アホくせえな~』なんて感想を溜め息で吐き捨てて、再びヘン=シン。
服ってより鎧だが、全身を覆い隠すって点では同じ効果が期待できる。
さっきは別に何も言われなかったし、当然、妙に
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