叶ーKanatoー

カンナ

第1話

「おい、何してん。ばっかじゃろ」


軽蔑しないでください。そんな瞳で。彼は短髪の私の頭を撫でる。だってあなたは髪が短い娘が好きって言ったじゃ無い。あのアイドルみたいな。


私だって、可愛くなりたい。あなたに褒められたい。


「お前、似合わん服きてるな。プッ。大地の色っぽい。お前、似合ってるけどな」


それが嘲笑混じりとしても、私は一言の褒め言葉が嬉しい。ねぇ、あなたの好きなご飯だって作れる。あなたの為に何だってできる。


そう思っていたのに。



「あいつ、何でもしてくれるから楽だわ。あ、付き合っちゃないよ。だって、ただの使用人、てな」



笑って美女と並んだ彼を見て、私は悟った。


私は叶えられなかった。


カナト、大っ嫌いなあなたの名前は、叶える、という一文字。だから、叶を見るたびに息がつまるの。


まだ好きだから。




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叶ーKanatoー カンナ @ka318nna

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