第1話
「小本紫暮起きろ!」
誰かの声が聞こえる。俺が目を覚ますと中学一年の時から高校に入学して一年たった今でもなかが良い…いや訂正、腐れ縁の井上 椿が仁王立ちで俺の机の前に立っていた。
「もう授業終わったぜ。次は昼飯だ。早く食おうぜ。」そう言いながらかってに俺の鞄から昼飯をとり屋上に連行していった。
連れて行かれた屋上で黙々と昼飯を食べていると、唐突に井上が喋りかけてきた。
「お前いつも寝てるよな。しかもテスト勉強もしないくせにての点数はいつも平均点以上。」
確かに俺は授業はだいたい寝てるし、テスト勉強しても教科書を読むくらいだ。
「それがどうした。」
「いや、お前がうらやましいと思っただけ。ほらそろそろ真剣に進路を決めないといけないだろ?もう高二なんだし。」
「それとこれに何の関係が?」
疑問に思い口に出すと
「いや俺さ、行きたい大学があるだけど今のままじゃ到底届かなくて。お前くらいの頭があれば勉強さえすれば余裕で行けると思うんだ」
と、言ってきた。
「なんか意外だな。お前って悩みとか無関係そうだから。」
「なんだよ、俺が悩んでたらいけないのかよ」
いけないというわけではない。ただ井上はいつも明るくて悩んでいる姿がイメージがないのだ。まぁ現在目の前で悩みの相談らしきものをされたが。どう見ても悩んでいるように見えない。それに井上は、親が営んでいる植物園の仕事を手伝い、のちに継ぐのかと思っていたからだ。まぁ、それは本人の自由か。
「俺はこう見えても悩んでるから。で、お前はどうなの?」
どうとは、何の事だろうと考えていたら呆れた顔で、
「だから、進路の事。関係無くないだろ。」
と大声で言ってきた。俺も関係無くないが、あまり考えていなかった。高一の頃から担任も少しずつ考えるように言っていたきがする。だが俺は、
「考えてなかったな。」
考え込んでいたらつい口から本音が出てしまった。
「お前なー。」
また呆れた声を出された。
そんなこんなで昼休みは終わった。
そして、五時間目と六時間目も終わり早く家に帰ろうとしていたら担任の内川に呼び出され職員室に来ていた。この先生は、よくわからない。去年もこの人が担任だったが他の先生とは違う感じがする。何か掴みどころがないというか。まぁ、ただ変人というだけかもしれないが。
「小本さ、ちゃんと進路の事考えはじめてる?今日、井上と話してただろ。」
なぜ知ってる。そう疑問に思いながら黙っていると、
「頭がいいのは知ってる。だが、いつも小本はてきとうに毎日を過ごしているように見える。」
と言ってきた。
「とにかく、前期が終わる頃に。もう一回聞く。考えてとけ。」
そう言いながら先生は、どこかへ行った。
「あんな事言われてもな。てきとうに過ごしてるか…。」
帰り道、俺の頭の中では先生に言われた言葉がぐるぐるまわってる。そんなつもりはない、はず。しかしそう言い切れるのか?はぁ、わからない。
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