~僕の初恋~

夏目 星

< 序章と第一章 >

< 序章 >

何故、人は苦労して生きていくのか。

何故、人は平等ではないのか。

何故、人の人生はこんなにも儚いのか。

この話は僕の経験に基づいた話だ。


< 第一章 ~小学校編~ >

僕はこのとき横浜の小学校に通っている四年生だった。

父親はのんだくれで、母親は普段からあまり家におらず絶えず喧嘩をしていた。

小学校四年生の半ばには、離婚をしていた。

おそらく、そういう事があったから早熟で育ってしまったのだろう。


季節は秋になった。

世間一般的にはまだ早いと思われるだろうが、僕には好きな子がいた。

一歳上の女の子で、名前は小山 美羽という。

きっかけは僕が本気で人生を諦め、死ぬことを考えていた時に美羽が質問をしてきたことだ。

僕はこの質問に度肝を抜かれた。


「死にたいの?」

驚いた、小学校五年生の美羽の口からそんな言葉が飛び出たからだ。

その質問に僕はこう返した。

「何故、そう思ったの?」

すると美羽は悲しそうな笑みを浮かべてこう言った。

「目を見ればわかるよ、私もだから」

僕はまたしても驚いた。

僕と美羽は似ているのでは?と思い話を聞いてみることにした。

なんと美羽は虐待されているらしい───。


僕にはかけていい言葉が見つからず、ある提案をした。

「お互い死ぬのはやめよう、これから先は近況報告をしあわないか?」

と、美羽は少し考えた末に首を縦に振った。


数日後、美羽から近況報告がしたいと図書室へ呼びだされた。

美羽はまた虐待を受けたそうだ。

彼女の体にはたくさんのアザがあった。

僕は辛かった、何も出来ない自分を責めた。

やはり小学校四年生なんかにできることはないのかと。

そして、この近況報告は約半年の月日が経ち終わりを迎えることになる───。


彼女は学校へ来なくなった。

一日、二日ではない、もう一週間も来ていない。

流石に心配になり家に行ってみようと考えた僕は先生のところに家の場所をダメ元で聞きに行った。

「先生、五年一組の小山さんの家を教えてください、お見舞いに行きたくて」

正直教えてもらえるとは思っていなかった。

しかし僕の予想を裏切り、教えてもらえたのだ。

先生にお礼を言いすぐさま美羽の家へ向かった。


家に着いた僕はまず家の中の様子を伺った。しかし家には誰もいなかった。

チャイムも鳴らしてみたがやはりいなかった。

しばらく待っていたが誰も帰ってくる気配がなく、暗くなってきたので僕は帰ることにした。

すると急に物置小屋から物音がした。

驚いたし怖かったが、僕は確認しに行くことにした。

泥棒だったらどうしよう、と考えたらますます怖くなったが落ちていた棒を拾い握りしめ、僕は物置小屋の戸を開けた。

そこにはもぞもぞと動く人影が。

ゆっくりとバレないように近づいていく、

「なんで、どうして……」

なんと、痩せ細った美羽がいたのだ。

棒を捨てすぐさま美羽に駆け寄った。


「なんでこんなとこにいるの!?お母さんとお父さんは!?」

「私をここに閉じ込めて2人ともいなくなっちゃったの」

「どうして!」

「わからないよ!」

「っ!ごめん」

「私もごめんなさい……」


美羽の身体状態、精神状態共にすごく悪くその場に倒れ込んでしまった。

慌てた僕はすぐさま救急車を呼んだ。

その後、美羽とは九ヶ月も会うことはなかった。


美羽に会えない日々は凄く辛かった。

連絡も取れず会うこともできない日々は僕の胸にポッカリと穴を開けていた。

しかし、突然現れたのだ。

僕の前に美羽が。


「ごめんね、いままで連絡も会うこともできなくて」

「いままでどこにいってたんだよ!心配してたんだぞ……」

「児童相談所、入ってた」

「なんで、そんなところに」

「私ね、親に捨てられちゃったんだって、だからね群馬県の北軽井沢におばあちゃんが住んでてそこに引っ越すことになっちゃったの」

「なんだよ、それ、親に捨てられたって」

「だからごめんね、もう会えなくなっちゃう。明日の朝にはもう出ちゃうんだ」

「なんでだよ!!!やっと会えたのに!!!」


僕は逃げ出した、美羽がいなくなるなんて信じたくなくて、絶対に嫌で逃げ出して家でずっと泣いていた。

しばらく経って落ち着いた僕は考えていた、このままでいいのかと。

決意した僕は、手紙を書いた───。


僕は朝、大急ぎで美羽の家に向かった。

美羽に謝って気持ちを伝えるために。

すると引越し屋のトラックが来ていた。

しかし僕は美羽を呼んだ、大声で。

「美羽!僕だ!」

「どうして……」

「少しだけ、時間もらえないかな、いま」

「ちょっとだけ、待ってて」

「わかった」

そして十分後。

美羽は来た、そして僕たちは公園に向かった。

「昨日はごめん!」

「どうして謝るのよ…… 謝らないといけないのは私の方だよ、ごめんね」

「美羽は悪くないよ、僕が悪いんだ」

「私が悪い!」

「僕が悪いんだって!」

「「ふふっ」」

なぜだか二人同時に笑ってしまった。だがこれがすごい嬉しい。

「あのさ、僕さ美羽のこと好き」

「え……?」

「付き合ってください」

「だめだよ…離れ離れになっちゃうもん……」

「関係ないよ、会いに行くし手紙も送る」

「でも……辛い思いさせちゃうし……」

「僕は辛くなんてないよ、美羽と付き合えるなら」

「ほんとに私なんかでいいの?」

「美羽がいいんだよ」

ついに僕は美羽に告白をした。

人生初の告白だ。

「ありがとう……よろしくお願いします」

そういって美羽は微笑んだ。

「やった!!あ、あとこれ車の中で読んで、僕の住所と電話番号書いといたから、できれば一人の時が嬉しいかも」

「……?わかった、ありがとね」

「じゃあ帰るね、また絶対会おうね」

「うん、またね」


僕は振り返らずに走った、こんな顔を見せたくなかったからだ。

せめて笑顔で送りたかったからだ。

僕は泣いた。

また会えることを信じ、連絡をしてくれることを信じて───。


< 第一章 ~小学校編~ 完 >


手紙の内容

急に引っ越すことをきいてびっくりしました。しかしだからといって縁が切れるわけではありません。僕はいつまでも美羽のことが大好きです。また会いましょう。連絡待ってます。

住所

神奈川県横浜市〇区〇井町〇〇―〇

電話番号

080-xxx-6xx1

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