異世界18きっぷ 2枚目 ー大世界樹の世界とふたりのエルフ姫ー
羽根守
第1話 精霊樹林のエルフ姫
精霊樹林の森を抜けた先は
異世界列車は速度を落とし、エルフの里の中心にあるステージへと向かう。
――今日はここが旅の地か。――いい仕事だ、異世界列車。
心の中でサムズアップしながら、ボクは異世界列車のドアの前に立った。その向こう側には、異世界列車の中を見ようとするエルフがいっぱいだった。
どこぞのスーパーアイドルグループがやってきたのか、と思わせる大きな賑わい。なんだか、すごく、恥ずかしい。こんなに注目を集められているのは経験にないし、ましてや、エルフの女のコがこぞってキャーキャーと叫んでくるなんて、もうこんなのニヤけ笑いだ。
――こんなカオじゃ、まったくモテないぞ。
ゆるめたカオをなおすために一度咳払い。コホンと表情を元に戻して、カノジョらの前に出る準備ができた。
――さあ、エルフの里へ行こうか。
異世界列車のドアが開くと、エルフの女のコが現れた。
「“渡り人”よ! 会いたかったぞ!」
小走りで駆けてきたエルフの少女はボクの両手を握りしめ、列車の中へと入った。
「
何層にも重なる白いロープ、首や指、腕にまで宝石で身につけられた装飾品、サラサラとした長い金髪とエメラルドの目。確かに見てくれはプリンセスだ。
「妾をこことは違う世界へと誘う者! 妾は貴公を来るのを待っていた! エルフの民の願いを叶えるために、妾と共に来てくれるな!」
「返事をしなくてもいいというのか。――ふむ、さすが渡り人!」
ルキはボクと手をつないで廻り出す。ボクが中心点となって、少女は円の弧を描くように回る。
「何も言わなくても妾の気持ちを受けとめるその心の広さに妾は感激じゃ!」
「いや、まだ何も見えていないのですが――」
というかあなた、勝手に列車に乗っているんですが。
「さあ、行こうぞ! 渡り人! 妾ともに、世界を救いに!」
その声に反応したのか異世界列車のドアは閉まりだす。
「ちょ、ちょっと!」
異世界列車が勝手に動き出したこともビックリだが、エルフの少女がいきなり世界を救うと言い出したことが驚きだった。
――世界を救う!? なんだよ、それは! いや!! そんなことより早く降ろさせて!!
異世界列車のドアを覗き見ると、エルフの少女達は「行ってらっしゃい」とやさしい笑顔で手を振っていた。これはもう異世界下車できない。
「エルフの里が! エルフの里が!!」
――エルフの里で遊びたかったのに!
エルフの里で旅ができず、ドアの前でうなだれる。ドアを叩くがそんな打撃じゃビクともしない。
いつしか頑丈な扉のガラスから映し出されたのは新緑色の精霊樹林。
異世界列車はボクとエルフ姫を乗せて、精霊樹林の森の中を通り抜けていた。
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