第3話 押し入れファッション

着せられたのはワンピースだった。

ただのワンピースじゃない。白いのだ。青のグラデーションのレースが胸元から裾まで伸びているのがまた可愛い。

膝丈なのは気づかってくれたのだろうけど、できたらパンツスタイルがよかったのが本音。しかも靴はパンプスなので歩きにくいことこの上ない。

可愛いが、わたしは機能性と動きやすさ重視なのだ。

「いいんじゃない?」

ルネさんは満足げにわたしを見ていた。

が、やはりここはしっかりと言わせてもらおう。

「他の服ありませんか?」

そろっと手を挙げて言った。ちょっとキョドっていたのは仕方ない。チキンだもの。

「どうして?」

ルネさんが顔をしかめる。おねえさんも不思議そうだ。

確かにこんな恰好普段なら絶対にしないから内心ドキドキしたし、可愛い服が着れて嬉しかったんだけど。

「いや、動きにくいから」

これでは走れない。

「女は多少動きにくい格好してた方が可愛げあるだろ」

それはルネさんの好みだろ。

「わたしに可愛げを求めないで貰いたい」

「お前女だろうが」

「ルネさんの言う女とわたしは別次元の女なんで」

「意味わからん」

押しつけはよくないよ。

いつの間にやらおねえさんがまたいくつか服を持ってきてくれていた。

「動きやすい服っていったらこの辺りかな?」

ショートパンツ多いな。

せめてハーフパンツと半袖。

なかなかわたしの希望通りの服が見つからない。ここは諦めてショートパンツを履くべきなのか…?

レギンス履いたらなんとかなりそうな気がしなくもないけどそうでもないかな。

うーん…

「お?」

見渡した先に格好よさげなブーツを発見。

とことこ近寄って手に取る。

「おねえさん、これ履いてみてもいいです?」

「いいけど、その辺りは少年向けよ?」

少年向けですとな!?

「むしろ大歓迎です」

「なんでだよ」

ルネさんからのツッコミは無視してブーツを履いてみた。ぴったり。

あとは、と。

あったあった。

わたしが選んだのは膝下までのゆったりしたハーフパンツと長袖Tシャツ。靴はブーツ。

動きやすさ最大。

「よくない?」

「かわいくない」

ルネさんに感想求めたのが間違っていた。

そんなわけでお会計。

安くはないけどそこまで高くもないお値段を払って、そのまま着て出た。

ここまですると冒険が始まる!って感じになるけど、倒すべき魔王は目の前に見えるお城にいるし、政治を動かしてるしで倒したらもれなくポリスメンに捕まる。

かといって経験値上げるためにやりそうなザコ狩りはその辺のチンピラを狩ることになるのだろうか。無理だ。

わたしのチキンさを舐めないでもらいたい。

チンピラを見たら目を合わさないようにして通りすぎる通行人Aなのだから。

しかしだね。

「ルネさん、いつまでついてくるの?」

本当にヒマなのね。

「別にいいじゃん。ヒマだし」

ヒマなの認めちゃったよ。

今日は川沿いに探索しようと思ってるんですけどついてくるのかな。

「わたし今日川の近くに行くんだけど」

「へえ、ハルはあの辺好きそう」

おっと、これ本気でついてくるやつだ。

「…いつものキラキラ女子と遊べよ」

舌打ちつきでボソッと呟きつつ、わたしは川を目指して歩きだした。

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