第13話 海辺にて

モノクロームの写真のよう

私達が見つめる

海と空


灰色の空につながる海と

波を吸い込む浜辺


波を運ぶ冷たい風に 

あなたは少し肩をすぼめた


温もりが欲しくて

手を繋いだら

雲間から光が漏れて

微かに海の色が変わった


なぜこんなに愛おしいのか

私にも分からない

浜辺に残された足跡さへ愛おしい


太陽が雲間に隠れたら

私は少し不安になった


遠くで少年が

未来に向かって

走っている


振り返ると

おどけたような

二人の足跡を

消していく波


明日という日の

漠然とした不安は

残したまま

輝く未来も

運んではくれない


繋いだ手を強く握ったら

あなたは私を見つめて微笑んだ

私は知ってる

あなたの笑顔の中の

輝く瞳は

海や空さへも包み込む


モノクロームの景色が

柔らかな色に染まった


逢うたびに

出逢いと別れを繰り返す

この光のように

儚げに

揺れて消える


けれど

あなたと過ごす時

悠久の時の流れに

身をゆだねるように

夕陽に染まる海が

波と風と調和し

奏でる音楽のように

ひとつに溶け合う


私は

いつも自分の心に

折り合いをつける

そして

あなたの瞳の中に

命をゆだねる

永遠を願いながら

ひと時の夢に

心をゆだねる


どんなに小さな

幸せでも

貪るようにすくい上げ

飲み干す


そろそろ行こうか・・・

その言葉に黙って頷いた

あなたは私の手を

少しだけ引き寄せ

強く握った

瞬間

夕陽はモノクロームの風景を

赤く燃やした

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