詩集 夢〜月が散りばめた物語のかけら

織辺 優歌

第1話 女と男の物語〜時の針

女は

時間が過ぎていくことを

怖れる

男は自分の時計の針で

時間を刻むから

逃している時を

怖れない (女の様には)



何かが行われなかった時

時間を失うことを

怖れる女


男は花

気ままに花を咲かせるように

生きている男は

諦めの中にも夢を求める


女は大地

女は大地のごとく

雨や雪や石ころや人間の重みに耐え

受け止める


女が時の流れに

苦しさや焦りを感じるのは

子どもが産めなくなった女も

子どもを産まない女も

体の奥深くに眠っている

その本能に逆らえないから

ましてや

これから生まれてくる命を抱える

若々しい子宮を持っている女は

限られた時間の中で

命の系譜を脈々と受け継ぐ

役割りを担っているから


時の尊さを知っているから

女は男を縛る

そして

子宮を満たし

命を誕生させようと

夜明けと共に目覚めるのだ


男は仕方ないよと言う

女は仕方ないなんて言ってられない

でも

女は強かな鞭のような心で

男のじれったい

針の歩調に合わせ

生きていくのだ


女の包容力は宿命

男の気まぐれは

おそらく

弱さを覆い隠すための手段


まだ救われるのは

男の中の善良な儚さを

男が知っていること

女は結局のところ

あいも変わらず大地で

奔放に伸びる硬い根っこの

痛みに耐えながら

夜を過ごすのだ。

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