星降鬼の洞窟編

第121話 転移先は

 飛ばされた先は洞窟の中だった。


 まるで結晶獣の洞窟のように、基本素材は岩で構成されているように見える。

 違うところと言えば、天井や壁がキラキラとしていてまるで満天の星空のように煌めいていることだ。


「ここがどこかは分からない……。でも、戻らないと。サンクリッド大陸のゼルビア王国に」


 元いた場所に戻ればシーラやゼロと会えるはず。

 同じ事を2人が考えてくれるかどうかは分からないけど、何処に行けばいいのか分からず彷徨うよりかはマシだ。

 ゼロは元々一人で旅をしていたし、心配する必要なんかは微塵も要らない。

 自分の心配をしろと言われそうだ。


 問題はシーラだよ。

 彼女の成長速度には目覚しいものがあるけど、精神面ではまだ幼い部分が残っている。

 戦う力があっても、それを発揮できるかどうかは別の話だ。


「クソッ……! 即死攻撃じゃなかっただけマシだけど……変な所に飛ばされるのなんてこれで2度目だ」


 個人的に順応力は高い方だと思う。

 それでも誰かと離れ離れになることが、こんなにも不安になることだなんて思わなかった。

 ガルムに呼ばれた時はそんな事思わなかったのに……!


「それほどシーラの存在が俺にとって大きかった……? いやいや、自己分析みたいなことはやめよう。それよりも、今はここから出る事を考えないと」


 見た感じはダンジョンっぽいけど……。


 あれ?

 よく見たら誰かの荷物とかあんじゃん。

 料理された食事的なものもあるし、誰かいるのかな。


「あーーーーーっ!」

「うおビックリした!」


 急に大声出されたら反響してめっちゃビビる!

 何だよ!


「ちょっと誰ー!? それ私の荷物なんだけど!」


 声の主がこちらに歩いてくる。

 身長はそれほど大きくない、150cmくらいかな。

 大きな三角帽? というか思わず「グリフィ◯ドール!」って叫びだしそうな黒い帽子を被っていて顔が分からないが、恐らくは女の子だと思う。


「何も手付けてないよ」

「嘘ばっか! 見てたもん、私の作った料理を食べたそうに見てたところ!」

「ああ、確かに美味しそうではある」

「ホ、ホント? えへへ……じゃなくて!」


 なにこの子。

 チョロそう。


「泥棒になんかあげないんだから!」

「だから泥棒じゃないってば」

「…………というかアナタ人間?」

「そういう君は人間じゃないの?」

「ふふふ……聞いて驚きなさい、私は魔族の中でも優秀なシルヴァード族の魔法使いなんだから!」


 そう言って自信満々に自身の被っている帽子を取った。


 ネコ耳だ。

 透き通るような青い髪にネコ耳が生えてらっしゃる。

 小さいし結構可愛らしい顔してるし、小さい時のシーラを連想させるね。


 というか何をそんなに自信満々に紹介したかったのか分からないけど、すっごい得意気な顔をしてる。

 驚いたフリとかした方がいいのかな。


「ヤバイじゃん! めっちゃスゴイじゃん!」

「そ、そうでしょ!? そう、スゴイんだから私は!」

「で、シルヴァード族って何?」

「ちょっとー! それぐらい知っとくのが当然でしょ!? これだから人間は……」


 その界隈では有名なのかな。

 俺が無知なだけ?

 でもこの子も何かアホの子っぽい感じするし……。


「ちなみにこれってどうなってんの?」

「あっ…………ちょっ……さ、触らないでよくすぐったい!」


 耳ってくすぐったいんだ。

 確かに俺も触られたらくすぐったいし、そんなもんか。

 でも触り心地は抜群だね花丸!


「しかしこれ以上やると、いよいよロリコンだと思われかねない……」

「………………? というか何でアナタはここにいるの? 見たところあり得ないぐらい軽装だし、そんなんでよくこのダンジョンに入ってこれたね」

「いやまぁ…………俺だって来たくて来たわけじゃないし……。ここってやっぱりダンジョン?」

「そんなのも分かってないの……? ここは『星降鬼ほしふるおにの洞窟』。魔王ヴィルモールが作った人工ダンジョンの一つよ」


 ………………マジかよ!

 飛ばされた先がまたダンジョンかい!

 そうするとソウグラス大陸以外のダンジョンか……。

 ソウグラスにある二つは踏破したし、できればサンクリッド大陸であってほしい!


「ちなみにここって何大陸?」

「本当に頭大丈夫……? アクエリア大陸だけど……」


 クソ外れた!

 大陸が違うってどんだけ遠くに飛ばされたんだよ。

 戻るのも大変だぞこりゃ。


「よく分かんないけど、ここは私が休憩ポイントにしてる所なんだから、早く出て行ってよね」

「え、せっかくなんだから出口まで教えてつかぁーさい」

「何でよ! 私はこれからこのダンジョンの主を倒しに行くんだから嫌よ!」

「じゃあ俺も付いて行くよ」

「来ないでってば! 私は一人で倒すつもりなんだから!」

「あ、そのご飯俺にも少し食べさせて。お腹空いた」

「聞いてる!? ねぇ私の話聞いてる!?」

「いいじゃんせっかくの美味そうなご飯なんだから、一人で食べるなんて寂しいことしないで」

「ま、まぁ私は天才だから料理も完璧だけどさ、それとこれとは話が別……」

「こんな美味そうな料理見たことないしなぁー。一口だけでいいから食べてみたいなぁー」

「………………しょ、しょうがないなぁ。一口だけなんだからねっ」


 チョロ。

 まじチョロQ。

 ちょっと後ろに引っ張ったら500mぐらい走りそう。


「俺、八代やしろみなと。君は?」

「私はアーネスト・イライザ・シルヴァード・シュールレ」

「なが。アイラでいこう」

「ちょっと! 勝手に省略しないでよ!」


 待ってろよシーラ。

 すぐに探し出してみせる。

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