異世界転移編
第2話 転移しました。つーか召喚されました。
「………………え?」
気付けば見慣れない場所にいた。
松明によって照らされた、ドラ◯エに出てくる洞窟の一室のような場所。
先程までコンビニでポテチとコーラという黄金タッグを買っていたと思うんだけど……それからの記憶がない。
なんだこれ。
「やった。マジでできた」
声がした後ろを振り返ると、フードを被った少年? 青年? が立っていた。
年齢的には同じくらいか?
「できたって何? 誘拐が?」
「召喚が」
あーなるほどヤバい奴ね。
これヤバい奴だ。
「ちょっと……状況が全く分からないんだけど」
「ああ、そうだよね申し訳ない」
青年はコホンと一つ咳をしながらフードをとった。
その素顔は金髪に中世的な顔立ちという、街中で話しかけられたら思わずアイキャンノットスピークイングリッシュと答えてしまいそうな容姿だ。
ただ、彼の左目が少々おかしい。
なんか厨二病患者がいたら喜んでしまうような傷が眼球に直接入ってる。
「僕の名前はガルム。君をこの世界に呼び出した張本人さ!」
「はい? この世界?」
「そうさ! ここは恐らく君がいた世界とは別の世界だ。僕の力で君をこの世界に呼び出した!」
「はいダウト。冗談はその痛い見た目だけにしてください」
「ダウト? 冗談なんかじゃないよ。現に君のその格好、この世界では見たことない服着てるし」
「いやそれそっちの判断材料じゃん。俺の世界にはないものをそっちが証明してよ」
怪しすぎて面倒臭くなってきた。
どうでもいいから早く家に帰して欲しい。
「そっちの世界にないもの…………火とか?」
「その喧嘩買った」
「うわっゴメン! ワザとじゃないんだ。ただ、君の世界にないものがどんなのか想像つかなくて…………」
「なんだそれ。異世界だってんなら魔法の一つでも────」
「魔法? あるよ? え、君の世界にはないの?」
「いやあるかぁ! ニ次元の世界にならあるけど」
まじか…………。
適当に言っただけなのに。
「最初からそれを見せてくれよ」
「君の世界にも魔法は普通にあるもんだと思ってたんだ」
「だったら火がないとか思わないだろ普通。とにかく、ちょっと使ってみ? 話はそれからだ」
「オッケー」
ガルムはまるで「ハンドパワーです」と言い出しそうに両手を向かい合わせに突き出した。
「…………
一言彼が呟くと、その両手の間に雷がバチバチと嫌な音を立てながら発光し始めた。
それはまさしく、テレビの天気予報などでカミナリが鳴っている時に見たことがあるような稲妻だ。
「どうだい? これで別の世界だと信じてくれた?」
「はいプラズマー。怪しい現象は全部プラズマで説明できるって俺のじっちゃんが言ってたしー」
「君のおじいさんは中々適当なことを言うようだね……」
正直内心興奮してる。
何これガチじゃん。
ガチ魔法っぽいじゃん。
逆にこれドッキリだったら、知らない間に拉致られて素手で雷出せるとか、現実も捨てたもんじゃないわ。
「雷以外も出せんの?」
「
ガルムの手からサッカーボールほどの大きさの火の玉が飛んでいった。
「おお……」
「今使った2つは初歩中の初歩だ。5歳児でも使えるんじゃない?」
「よし。紡げ、
シン………………。
清々しいほどの無反応だ。
「…………で、誰が5歳以下だって?」
「何も言ってないよ! 君は違う世界から来たんだし、まだコツが掴めていないだけなんじゃないの?」
「このまま使えないなんてオチはないよな?」
「………………」
「目を逸らすな」
おいおい……せっかく異世界だって信じかけてるのに魔法が使えないなんてそんな無情なことある?
あゝ無情!
「とりあえず、ここが別世界だっていうのは信じてくれたわけだね? じゃあ話は次に進んでもいいよね」
「ああ、中々面白かったよ貴重な体験でした。じゃあ元の世界に帰して」
「ちょっと! 気が早すぎるよ! まだ僕の話は何も進んでいないじゃないか!」
「いやー色々見れたんでもう満足です。お腹いっぱい! 買ったばっかのゲームやりたいんで転移よろしく」
「…………残念だけどそうはいかない。君にはこの世界でやってもらいたいことがあるんだ」
「いくらなんでもそりゃ勝手すぎるだろ。訳わからん所に急に呼び出されて、混乱してる中で異世界だのなんだの言われて……納得なんざできるわけがない」
「確かに言い分は分かるけどね」
「だいたいなんで俺なの? 俺に何させるつもりなの?」
「ある武器を使ってこの世界にいる魔人を使役出来るようにしてほしい」
魔人? なんか危なそうな単語だな……。
漫画みたいにそういうのと戦争よろしく状態か?
「君が選ばれた理由だけど、恐らくその武器を扱えるのが君だけだから、ということになるのかな。そういう条件で僕は召喚術を使用したからね。おかげで魔力の消費量が多すぎて、僕は君がこの世界にいる間は恐らく魔法が全然使えないだろうな。さっきの威力を抑えた初級魔法だけでも乱発できないし」
「戦うとか…………無理に決まってんじゃん。ケンカだって滅多にしたことないのにそんな生死の危険が伴うようなさぁ……。選ばれた者っていう優越感はたまらんけどな」
「その点は恐らく大丈夫だと思うよ。君は僕に使役される
「
「多分ビビるよ。魔法はさっきも言った通りにコツが必要だから、それも僕が教えるよ」
「至れり尽くせりかよ」
「それだけ君にやってもらいたいのは重要ってことさ。そういえばまだ君の名前を教えてもらってなかったよね?」
確かに言ってなかったわ。
こんなとこ急に呼ばれてイライラしてたからな。
というか今もまだ怒り収まってないからな。
帰らしてくれなさそうだから、無理矢理に順応してやるけど。
そんな簡単に死にそうになったりなんてしないでしょ。
「しゃーねーなぁ教えてやんよ。俺は
「何でそういうこと言うの!?」
だってムカつくし。
ここいらで俺の気持ちを説明しておいた方がいいと思ったから。
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