8.運命の合わせ鏡

 ヒロムおじちゃんたちは、既に帝国軍艦隊に向け攻撃を開始した。


「アイさん、ソレイユ全速前進!」

『かしこまりました。』


 お父さんとお母さんのサポートAIだったアイさんは、今はソレイユの専属AIだ。

 私のセルグリッドは正規品ではないので、サポートAIが入れられない。


「私もアーマーで出るから。アイさんはソレイユを落とされないように、お願い。」

『おまかせください。』

 私はブリッジを後にする。


 私は格納庫でヴァリアントアーマーを纏い、艦上へと出る。


 味方の戦艦20隻が帝国軍戦艦を攻撃している。

 私は戦場に目を凝らす。


 ヒロムおじちゃんにも言われているが、私が戦うべき相手は眷属だ。

 現状で眷属を倒せるのは私しか居ないからだ。


 黄金色の光が艦船を照らし、敵戦艦から発した2本の筋が戦場を駆け回り始めた。


「いた・・・・・・、それも2つ。」

 私は自然と笑みがこぼれた。





「ふははははは、残念だったなっ! 貴様らが"独行の技師"を狙っているのはわかっていたのだよ!!」

 眷属が通信帯域全体に響くように大声でがなり立てている。

 2体の眷属が味方艦艇を破壊する。


「たったこれだけの戦力など、我ら2人であっという間に蹴散らしてくれるわ!!」

 艦艇からの攻撃をものともせず、眷属は味方の艦へ攻撃を仕掛けている。


 私はソレイユ艦上から飛び立ち、2体の金色に向け突撃する。


「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 ブレイヴセイバーで眷属の1体に斬りかかる。

 眷属は手に持つプラズマナイフで受け止める。


「現れたな! 貴様が最近我らの同胞を狩っているという生意気な小娘かっ!!」

 正面にいた眷属の姿が消える。後ろっ!


 体を半回転、肩に取り付けたシールドで攻撃を受け止める。

 シールド表面がプラズマナイフの熱量で融解していく。シールド表面の剥離装甲が剥がれダメージを発散する。


「貴様ごときに2人がかりとは屈辱の極みだが、プロト様からのご命令だ。」

 スキル「警戒」が後方からの危険を知らせてくる。



 私は左目を起動する。


 レガシ"運命の合わせ鏡"


 お母さんが遺してくれた"漆黒のロケット"と"想起の水鏡"、この2つは合体させることが可能だった。


 2つのレガシが合体した結果、過去も未来も見通すことが可能なレガシになった。


 ただ、未来は狙った時点を見ることはできない。今の情景を早送りにできるだけだ。

 だから、遠く未来を見るためにはたくさん早送りが必要なため、とても時間がかかる。


 お母さんが死んでしまった後、"運命の合わせ鏡"は私の左目と融合し、左目は藍色に変わった。


 未来視で遥か先の未来を観るには時間がかかる。しかし、戦闘中の数瞬先を見るだけならば!



 左目には正面に居る眷属、その一瞬先の動きが映る。


 私のシールドに切りかかっている右手はそのまま、左手のプラズマナイフを突き出しきている。

 ブレイヴセイバーを先回りさせ、左手が突き出される前に斬り落とす。


 背後へ左目を向ける。

 別の眷属がプラズマソードで切りかかり、私の背中を袈裟斬りにするのが見える。

 振り向くこともせず、背後からの袈裟切りを受け止める。


 正面の眷属が、右手のナイフを投げつけ、その隙に後ろを見せて逃げていく姿が見える。

 飛んできたナイフを叩き返す。眷属の背中に突き刺さる。

「うがっ!」


 そのまま眷属に接近し、背後から首を切断する。

「1つ。」


 再び背後の眷属に左目を向ける。

 両手にレーザーライフルを持ち、レーザーを乱発してくる様子が見える。

 乱発とはいえ軌道が全て見えている。全てを回避し接近!


 ブレイヴセイバーで胴体を両断する。

「2つ。」



 眷属を倒し、改めて周囲の戦況を確認する。

 敵戦艦10隻のうち、既に6隻が沈んでいる。


「もう、居ないか・・・・・。」

 私のつぶやきを聞いていたかのように、敵戦艦の1隻から再び金色の筋が発生し、味方の艦船を攻撃し始めた。



「まだいたね・・・・・。」

 私は笑みで歪む口角を押えることも無く、その金色に向け加速していく。



 眷属は金色の軌跡を残しながら飛行していく。

 味方戦艦の船首から船内に突入していく。


 私は左目で見る。

 ブリッジの上から飛び出す眷属の姿が見えた。


 私は壁を破壊してブリッジに飛び込む。

 丁度、床を破り眷属がブリッジに上がってきたところに出くわした。


 無防備な姿の眷属を横から蹴り飛ばす。



 反対側の壁を突き破り、眷属は船外へ吹き飛んでいく。

 眷属が開けた穴から私も追う。


「ぐぅっ! 貴様いきなり蹴り飛ばすとは、やってくれるなっ!!」

 眷属が目の前から消える。

 だが、左目は背後に回りこんでいく眷属の姿を捉えていた。


 後ろを見ず、脇を通してブレイヴセイバーで背後を斬り上げる。


「ぐぁぁっ!」

 左腕を切り落とした。

 振り向きながら返す刃で首を斬り落とす。


 左目に奇妙な姿が映る。五体満足な眷属が、再び襲い掛かってきている。



 眷属の背後から白く細い腕が伸び、斬れた首と腕を修復している。


「なにこれ・・・・・。」

 眷属がプラズマナイフを抜き、斬りかかってくる。

 ブレイヴセイバーで受け止め、膝蹴りを入れる・・・・が、防がれた。


 眷属の左手が光る。

 咄嗟に右肩のシールドを全面に向け防御する。


 シールド表面で発生する爆発! シールドが爆散し吹き飛ばされた。

 何を手から発射したのかわからないが、直撃するのは危険だ。


 吹き飛ばされて錐もみ状態の姿勢を直しながら、レーザーライフルを抜く。

 眷属に向け引き金を絞る。


 左目で動きを確認、回避行動を先読みしながら照射する。

 レーザーは眷属のボディを捉えるも、大したダメージにはなっていない。


 眷属が更に加速、一気に肉薄してくる。

 両手のプラズマナイフを連続で振るってくる! ブレイヴセイバーでそれらを受け流す。


 数合打ち合う。

「オールドマンの体を持つ我らとここまで渡り合うとはっ! 貴様只者ではないな。」


 ナイフの突きを蹴りで逸らし、伸びた右腕に向け斬りおろし、切断する。

 返す刃で逆袈裟で斬り上げ、更に返しで首を切断する。


「ふははは、無駄だ無駄だ!」

 即座に白い腕が体を修復する。


「独行の技師は渡さぬ。ここで死ねぃ!!」

 眷属の左手が光る。


「ソウルバースト、最大稼動!」

 全身を分厚い赤いオーラが覆う。


 眷属のスピードは異常だ。だが、左目なら見える。


 奴の繰り出してきた左手を回避しつつ斬り落とす。

 そのまま背後に回りこみ、横薙ぎに胴を両断する。

 切断された上半身を斬り上げ、斬り下ろす。


「おぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

 下半身も刻む、再び上半身を刻む、頭部を細切れにする。

 残っている破片の大きなものから順に切り刻んでいく。


 眷属の周囲を限界速度で旋回しながら、目についた塊を切り刻む。

 少しでも斬れる部位は全て斬る!!



 粉々になった大量のかけらが漂う、その中に白い塊が残っていた。アレだけは斬れなかった。


「あれが修復の元?」

 その瞬間、白い塊から何度もみた白い腕が大量に伸び、かけらを拾い集めて眷属を再生させていく。


「すコし、焦っタぞ・・・・・。」

 上半身、下半身、腕、と少しずつ復元されていく眷属・・・・・。

 を、待つ義理は無い。


「どこまでも、切り刻んであげる。」

 修復途中の眷属を再び粉みじんになるまで切り刻む。


 一瞬の後、白い塊が再び眷属を修復し始める。


「マ、まテ・・・。」

 再度粉みじんになるまで切り刻む。

 最大稼動でマナバッテリーが1つ空になったのでパージする。

 マナバッテリーは残り2つだ。全て使い切るまで切り刻み続ける!


 再び修復が始まるが、頭部が再生されるのを待たずにすりつぶす!


「ヤ、やm」

 切り刻む。


「た、たのm」

 削り潰す。


「お、おねg」

 斬り削る。






 眷属は修復しなくなった。


「まだ25回しか再生していないのに。意外と根性無いね。」

 白い塊だけが残された。


「これが独行の技師でいいのかな? しまった・・・・、独行の技師がどんな見た目か聞いてなかった。」

 とりあえず持ち帰ろう。違ったら捨てればいいし。


 私は白い塊を手に、ソレイユへと戻った。

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