16.インヴェイダー決戦

 オリジネータ内部は複雑な経路ではあったが、基本一本道だった。

 今のところは何も現れていない。4チーム8名で周囲をカバーしつつ進む。


 しばらく進むと、何本も柱に支えられたような広間に出た。



「外からみた樹木のサイズを明らかに超えてるよなぁ、これ。」

 一緒に進んでいたメンバーの誰かがこぼす。たしかに樹木の幹に収まらないサイズだ。

 このあたりも謎のテクノロジーだな。


 広間を慎重に進む。

 周囲から微かな物音、金属同士がぶつかるような音が鳴り始める。

「来たか・・・・。」

「周り全部か!?」


 柱の影から大量のインヴェイダーが現れる。罠か・・・・。既に囲まれている。

「隊列はそのまま、進行方向に強行突破だ!」

「おう!」

 全員、ここまで来て撤退は考えていないようだ。強行突破し前に進む!!


 周囲全方向からインヴェイダーが殺到する。各自レーザーで接近してくるインヴェイダーを撃破していく。

 だが、その死骸を乗り越え、更に大量のインヴェイダーが襲ってくる。


「俺が血路を開く!!」

 俺はソードを両手に持ち、前方に突撃する。

 くさびを打ち込むようにインヴェイダーの群れを割り、強引に突き進んでいく。


 広間から出る穴が見えた!

「あそこだ!!」

 なだれ込むように穴に飛び込む。後方に向けレーザーを一斉発射。穴に侵入してくるインヴェイダーを片っ端から撃破する。

 後方を攻撃しつつそのまま穴を進んでいくと、徐々にインヴェイダーの追撃は弱まっていった。


 気が付くと、8名居たメンバーは4名まで減っていた。全員複雑な表情だ。

 たった一度の交戦で半数が脱落した。この先に無事進めるのだろうか。その迷いが全員の表情から見て取れた。



 進むことに躊躇し足を止めていた俺たちの耳に、外の戦いが無線越しで聞こえてくる。


「第2戦車隊、壊滅!」

「第5戦車隊、押さえろ!!」

「第17歩兵隊、被害甚大です、撤退の許可を!!」

「だめだ、止めきれねぇ!! だ、誰かぁぁぁ!!」


 任務を果たさなければ、そのために犠牲になった人達が無駄死にになってしまう。

「行こう。」

 全員が頷く。



 その後も散発的なインヴェイダーの強襲は続いた。人的被害無く対応できたが、全員目に見えて疲労していた。


 再び広い部屋に出た。この部屋はドーム状だ。中心には1mほどの台座のようなものがある。


「いかにも"何かあります"って雰囲気だな。」

 ジョーが周囲を見渡しつつ呟く。


 俺は中心の台座に近づく。3人のメンバーも俺に付いてい来る。

 台座には小さな銀色の卵が乗っているようだ。


「これは・・・・・?」

 俺は卵に手を伸ばす。が、触れる直前、電撃が走り触れようとした手が弾かれた。

「だ、大丈夫か!?」

 ジョーは焦ったように俺に確認してくる。俺は手を上げ、問題ないことをアピールする。

 実際、手は何ともない。ただ弾かれただけだ。


「しかし、触らせたくない何かか。なら尚更どうにかしたくなるな。」

 俺はソードを取り出し、プラズマ発振、銀の卵に向け振り下ろす。しかしソードも到達直前に弾かれる。


 その瞬間、「警戒」スキルが周囲の危険を知らせてくる。

「気をつけろ!!」


 部屋中の床から銀色の触手が生え、襲い掛かってきた。

 触手の先端はピンクの刃を発している。


 俺たちは一斉に飛び退く。一瞬遅れて台座周囲には触手が殺到する。


 ソードを両手に持ち、次々と接近してくる触手を切り落としていく。

 しかし、切った先端は直ぐに回復し、更に新たな触手が床から生えてくる。


「元を断たないと、ダメかな!!」

 俺はレーザーライフルを構え、台座に乗った銀色の卵を狙い撃つ。

 が、やはりレーザーも効かない。卵は健在だ。


「うがぁぁぁっ!!」

 仲間の一人が触手で貫かれ、切り刻まれている。


「卵がダメなら!!」

 俺は再びソード二刀流に持ち替える。触手の隙間を抜け台座に一気に接近していく!


 大量の触手が行く手を阻む。隙間を狙い左手のソードを投擲する。


 銀色の卵、その台座に向けて一直線に飛んでいくソード。

 しかし、触手が無数に立ちふさがりソードは止められる。


「やはり、台座を守ったな?」

 台座を守るために触手の密度が少し下がった。その隙に俺は台座まで接近していた。


 多数の触手ごと台座に斬撃を一閃。

 横一文字に切り裂かれ、卵は台座の上部ごと宙に浮く。


 すべての触手が停止する。

 銀色の卵が床に落ちた。


「やった! インヴェイダーどもの動きが止まった!!

 外の無線が聞こえる。どうやらインヴェイダーは止まったらしい。


「やったぜ!! さすがだなヒロム!!」

 気が付くと横に来ていたジョーが、俺の肩をバシバシと叩いてくる。痛い。



「よし、早速脱出しようぜ。」

 ジョーが号令をかけ、3人で壁にレーザーを照射する。

 内部からは意外とあっさり壁を破壊できた。


 融解した体表の放つ熱で揺らめきつつも、外の景色が見えた。



 外から歓声が響く。

 外にいた仲間たちは、俺たちを見て歓声を上げ、喜びを露わにしていた。


「俺たちは、勝ったんだ。」





 ジョーともう一人は先に外へ出た。俺は少し気になって振り返る。


 銀色の卵が落ちている。

 卵に近づき、そっとつついてみる。弾かれない。


 どういった効果だったのかわからないが、その効力は切れたということか。


 拾うために手を伸ばそうとしたところで、銀色の卵が再び光を放つ!

 銀色の卵の放つ圧により俺は吹き飛ばされ、外へ飛び出してしまった。


 飛び出して目に入ったのは巨大なつぼみ。俺たちはつぼみの中に居たらしい。

 体勢を直し、着地する。


「ヒロム!!」

 ジョーがこちらに駆け寄ってくる。俺は今さっき自分が飛び出してきたつぼみから目が離せなかった。



 つぼみが開花する。中には先ほどの銀色の卵だ。

 先ほどまでと同様、細い台座の上に載った状態でまばゆい光を放っている。



 全員がその光景を見守っていた。これは一体なんなのか・・・・。


 すると、停止していたはずのインヴェイダーが再び動き始める。


「うぁぁぁぁぁ!!」

「ぎゃぁぁぁぁ!!」

「い、いてぇよぉ!!」


 突然の事態で被害が拡大している。


「まだ終わっていない!! 迎撃しろぉ!!」

 間近にいた部隊長が激を飛ばしている。


「ジョー!!」

「ああ!!」

 俺とジョーは飛び立ち、銀の卵を目指す。


 銀色の卵周辺に再び多数の触手が出現し、全ての触手が先端から一斉にレーザーを照射する。

「ぐっ」

「がっ」


 多数のレーザーが俺とジョーの体を穿つ。

 俺は辛うじて致命的なダメージは避けた。しかし、左手と右足は貫通されてしまった。


 ジョーの体が傾く。

「ジョー!!」

 ジョーは胸を数か所撃ち抜かれていた。


「い、いけ、」

 かすれた声でそういい残し、ジョーは落下していく。


 俺は一瞬の逡巡を挟み、銀色の卵に向けて飛び立つ。


 

 周囲を旋回し隙を伺う。

 銀色の卵周辺にある触手は俺を捉え続けているため、俺の移動に併せ触手が移動していく。


 敵のレーザー一斉照射、を直前で回避!! 体のあちこちにレーザーがかすり装甲を融解させる。が、これで隙ができた!!


 レーザー照射後の隙を狙い、一気に銀色の卵に接近する。

 卵自体はまた弾かれるかもしれない、だから狙いは台座だ!


 右手でソードを構え、銀色の卵、その台座を横薙ぎで切り払う!


 だが、ピンクの刃を放つ触手に受け止められた。

「くそっ!!」

 つばぜり合いにはせず、ソードを引き、再び下から斬り上げる。も、再び触手に受け止められる。


 触手と数合打ち合う。攻めきれない、せめて左手が使えたら・・・・・。

 更に触手が増え、敵の攻撃は猛攻と呼ぶにふさわしい勢いとなる。


 ぐっ、手数が追い付かない!!


 レーザー触手がこちらを狙ってくる。やむなく後退する。直前に居た場所の床が融解する。

 レーザー触手は立て続けに狙ってくる。再び回避! そこへ大きな影が差しこむ。


 上から視界を埋め尽くすほどに巨大な触手が迫っていた。

 俺は避けきれず、咄嗟に右手で体を庇うように防御する。


 鞭のように振るわれた巨大触手に叩き落とされる!



 背中から地面に衝突する。

「ぐはぁぁ・・・」

 大地に亀裂が走るほどの衝撃。ごぼごぼと自分の口から血があふれてくる。


 痛みで気絶しそうになりつつも意識を必死につなぎとめる。

 銀色の卵は勝ち誇ったように触手をゆらゆらと漂わせ、余裕を見せている。


「こ、こいつ・・・・・。」

 ここまできて、負けねぇ・・・・。


 俺は立ち上がるため更に体を起こす・・・・、が、起き上がれない。

 右腕に力が入らない。さきほどの防御で右腕の骨が砕かれていた。動かせない。

 俺は身体を支えられず、地面に突っ伏してしまった。


 周囲では虐殺が続いていた。無事で残っている友軍はほとんどいない。

 エクスタ隊も触手の攻撃でほぼ全滅だ。



 多数のレーザー触手が俺を捉える。 

 もう、だめなのか・・・・・。





 だが、レーザーは照射されなかった。

 すべての触手は一瞬にして全て切り刻まれていた。


 目の前に何かが落下してきた。衝突で地面がひび割れ砂埃が立つ。


 落下してきたのは二人の人物。その二人は片立膝の状態から立ち上がる。



「すごいな、ヒロム。」

「あとは、まかせて。」


「え、アマクサにラファ?」

 二人とも重装備の強化スーツのような物を着用している。


 アマクサらしき人物の周囲には、以前にも見たことのある盾が浮遊している。さらにあれは・・・・、剣?


「ジジルア中佐、周囲のヴァリアントをお願いします。」

 アマクサが誰かに何かを告げた。


 地面に影が差す。上を見上げ、俺は呆気にとられた。4隻の宇宙船が浮かんでいる。

 宇宙船は地上に向けレーザー砲らしき物を照射する。レーザーはピンポイントでインヴェイダーを焼き尽くしていく。



 アマクサは銀色の卵に向き直り、宣言するように言った。

「ついに見つけたぞ。」

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