超人

比名瀬

第1話 いつも通りの日常

『こ、こちら!現場から中継です…!』


 朝食時のテレビの向こう側。

 そこから聞こえてくる男性アナウンサーの声は焦りと緊張が滲んでいて、そのテレビに映し出される現場とやらが余程深刻な事態なのだと教えてくれる。

 何やら大勢の武装した特殊部隊が奥の方に大勢見えた。


『先程から、"超人スーパーヒューマン”2名が銀行内に数人の人質をとって立て篭もっているようで、警官隊が説得をしているようですが、依然として彼らは人質を解放せずに中に立て篭もったままの状況です…!』


「また超人能力者の奴らか」


 呆れを含んだ溜息と共に一言。朝の食卓を挟んだ正面に座る父親の口から零れた言葉。

 それに目を向けずに、僕は朝食を口の中に押し込んでテレビから目を離す。


「はあぁ……。お前はあんなやつらに関わるんじゃないぞ?もし出会っても一目散にそいつから離れるんだ。いいな?」

「わかってるよ、父さん。僕も危ない目にあうのは後免だしね。ごちそうさま」


 父の忠告に思っている事を言葉にして返し、食べ終えた食器を重ねて立ち上がる。

 現場がこの後どうなるのか知らないが、どうせ今夜のニュースにまた報道されるだろうし気にしなくていいか、と思った。

 僕は、さっさと流しへ食器を片してから荷物を持ち、いつも通りの日常通りにカバンを引っ掴んでそのまま家を出る。


「いってきます」

「いってらっしゃい。気をつけろよ」

「わかってるって。それじゃ」


 いつもの父とのやり取り。

 それを経て玄関を出る。


 朝の日差しが眩しくて、日差しを手で遮る。

 物騒な事件が起きていようとも、僕の日常は変わらない。太陽の眩しさも父とのやり取りも何もかも。


 だから僕は何一つ気に求めず、いつもの日常通りに活動を始めた。

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超人 比名瀬 @no_name_heisse

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