影津木 洋次(かつぎ ようじ)の場合
◇ホラー
影津木 洋次(かつぎ ようじ)の場合
「ここん
さすがに対戦格闘ゲームにも飽き、
街なかの小綺麗な一軒家。
一階はオープンなガレージになっていて、ゴツいオフロード車と最新式の電気自動車が並んでいる。
きれいに刈り込まれた芝生の庭は、奇妙な曲線の鉄格子で囲われていた。
警備会社のシールも貼ってあるが、何の役にも立たないだろう。
そう、ゾンビが街に溢れた今となっては。
「どんな人かはしらないけど、まぁぼくらとは接点のないような人だろうね」
ポテチを食べていた
隣の窓にゆっくりと歩み寄り、あくびを噛み殺す。
涙の滲んだ目を、メガネをずらして指先で
直継と洋次、この二人はもともと知り合いでもなんでも無い。
ゾンビから逃げ、この家の向かい側にある大きなショッピングモールに駆け込んだところで初めて出会ったただの行きずりだ。
それでもこのゾンビだらけの島で同年代の仲間は心強く、行動をともにしているうちに、たまたま見つけたこのソーラーパネルのある立派に家に、一緒に逃げ込んだのだった。
この家での生活も半月。
水道水はすぐに出なくなった。
しかし、飲み水はウォーターサーバーにまだ1ヶ月分ほどの予備タンクがある。
それに、となりのマンションの水道はなぜかまだ出るので、洗車用のホースで窓を渡し、トイレの水やシャワーに使っていた。
電気は屋根にある大きなソーラーパネルで、電気自動車のバッテリーに蓄電されているらしい。
この半月、あまり気にせずゲームや電子レンジに電気を使っていたが、一向に電気切れになる様子もなかった。
隣にはガソリンスタンドがあり、冬になって必要になれば燃料も手に入るだろう。
道路を挟んで向かい側には前述のとおりショッピングモールもあり、しばらくの間食料にも困ることはなさそうで、つまりはこのゾンビだらけの
「しかしヒマだな」
「それ言う? ゾンビが溢れた島の真ん中で」
「しょうがねぇじゃん。ヒマなもんはヒマなんだから」
ははっと軽く笑って、二人は同じように肩をすくめた。
「まぁ確かに……。ぼくらゲームしてお菓子たべて寝るだけの生活だもんね」
「むしろゾンビが出る前よりいい暮らししてんよなぁ、俺ら」
「だよねぇ。まぁナオが趣味の合うやつで良かったよ」
「それもあるなぁ。洋次じゃなかったらサツバツとしてたかもしれねぇな」
ぽかぽかした秋の太陽を浴びながら、二人はのんびりと窓枠にもたれかかる。
柵の向こうをゾンビが徘徊しているのを除けば、本当にヒマな休日の午後といった雰囲気だった。
「ゔぁあァぁァ……」
突然、ゾンビの唸り声が大きくなった。
生きている人間を見つけたゾンビが、時々そうやって活性化するのを二人は知っている。
ここに自分たちがいるのを人間に見つけられると面倒なことになることもまた、知っていた。
ほぼ同時にカーテンをピッタリと閉じ、二人は隙間から外を覗く。
道路に駆け出してきたのは、彼らと同年代の女子高生だった。
制服は汚れ、あちこちかぎ裂きができている。
もともと短かったであろうスカートは、ほとんど衣服の役に立たないほど破れていた。
直継は「おっ」と驚きの声を上げ、カーテンを閉じて洋次を見る。
ふとももをじっと見つめ、ごくりと喉をならした洋次も直継を振り返った。
同時にカーテンを開ける。
「おいそこの! こっちだ! 塀を乗り越えてこい!」
「おーい! すぐにハシゴを下ろすから走って!」
カーテンを開け、久しぶりに大声を出す。
女の子もこちらを見つけてノータイムで塀へ飛び乗ったが、周囲のゾンビも一斉に押し寄せた。
「ヴァあぁあアぁ……」
周囲に輪唱のように響くゾンビのうなり声。
その声は直継たちに、自分たちがゾンビという化け物のど真ん中にいるのだと思い出させるには十分な圧力を持って響いた。
洋次はベランダに出て緊急時用のハシゴを下ろす。
塀を越えることができずにうなり続けるゾンビを尻目に、少女はハシゴに飛びつき、一気に登った。
「よいしょぉっ!」
最後の数段を洋次たちに引っ張り上げられ、少女はベランダに転がる。
アルミ製の軽いハシゴを巻き上げると、三人はゾンビの唸り声から逃げるように部屋へ入り、サッシを閉めた。
「おい、大丈夫か?」
「大丈夫? はい、これ水」
防音の二重サッシに遮られ、外のゾンビの声はほとんど聞こえなくなった部屋で、洋次は水を差し出す。
息を切らしながらゴクゴクと飲み干した少女は、やっと人心地ついた様子で「ありがとう」と涙をこぼした。
「俺は直継、ナオでいい。こいつは洋次だ」
「あ、わたしは
「いいっていいって。あ、腹減ってるか? 食いもんあるぜ?」
「いやその前に、シャワー浴びたほうよくない?」
洋次にそう言われ、美咲は自分が血やなんだかわからないゾンビの体液で汚れていることに気づく。
適当にクローゼットの中から探しだした衣服を持ってバスルームへと案内し、直継と洋次はリビングルームへと戻った。
程なく、シャワーの音が聞こえはじめる。
二人は目を合わせずにソワソワして、やがて直継は意を決したように立ち上がった。
「ちょっとナオ、どこ行く気?」
「ト……トイレ……じゃねぇよ。うるせぇな、いいだろ」
「ダメだよ」
「バカお前アレだ……噛まれた跡がないか確認しねぇとだろ?!」
確かに、もし美咲がゾンビに噛まれていたら、やがて彼女もゾンビになる。
その場合、ゾンビ化する前に追い出す必要があるだろう。
もっともらしい言い訳をこれ幸いと受け入れて、洋次も立ち上がった。
「な……なるほど、確かに確認しないとまずいね」
「なんだよ、結局お前も行くのかよ」
「ふ……二人で確認したほうが見落としがないだろ」
「お、そうだな。……とにかく急ぐぞ」
こうしている間にもシャワーが終わってしまうかもしれない。
二人は急いでバスルームへ向かった。
こっそりと近づき、すりガラス越しに覗き込む。
美咲のほっそりとした体のシルエットが良く見えた。
「おい、少し開けようぜ」
「ダメだよ! 絶対バレるって」
「全体にぼかし入ってるの見てたって面白く……じゃねぇや、噛み傷なんかわかんねぇだろ!」
「それはそうだけど……」
コソコソと相談した結果、直継はガラス戸へと手をのばす。
ほんの少し、わずかな隙間を開けるだけのはずだったが、立て付けの良いユニットバスの扉は「ぼしゅ」と空気の抜ける音とともに、10センチ以上も開いた。
「えっ?! きゃああ!」
水のシャワーを浴びていた美咲が両手で体を隠してしゃがみ込む。
洋次は叱られた子供のように身をすくめたが、直継は居直り、立ち上がった。
「な……なに?! 出ていって!」
「なにじゃねぇよ。お前がゾンビに噛まれてないか確認に来た。俺たちにはその……なんだ……アレが、権利があるだろ」
少し血走った目をして、洗車用ホースのコックをひねり、水を止める。
ちょうど目の前にある直継の股間が膨れ上がっているのを見て、何を言っても無駄だと悟った美咲は、助けを求めるように洋次を見た。
一瞬ためらい、洋次も直継を見上げる。
視線を戻し、美咲の真っ白な肌とスラリとした体のラインを見た洋次は、ゴクリとつばを飲んで立ち上がった。
「ご……ごめん、ぼくらのい……命を守るためにも、確かめさせてもらう」
「そういうこった」
直継は
普段とは違う殺気立った直継に、洋次は逆らうこともできずに美咲の右手を押さえる。
あらわになった胸を、直継は左手で荒々しく揉んだ。
「はぁっ、はぁっ……お……おっぱいに……はぁっ……傷はなさそうだな」
美咲に睨みつけられながら、直継は笑う。
そのまま胸にしゃぶりつくと、左手でカチャカチャと自分のベルトを外し始めた。
「な……ナオ、なにする気?」
「はぁっ……バカヤロ……ここまでやったんだ……はぁっはぁっ……途中でやめられっかよ」
「えっ?」
「大丈夫だ、洋次もやればいい。悪いけど俺が先な」
ズボンを脱いで、邪魔くさそうに蹴り飛ばす。
右手につばを付け、美咲の股間になすりつけると、彼女の真っ白な太ももを持ち上げて自分のものを突き刺した。
「うぅっ! いっ痛ぁっ!」
泣き叫ぶ美咲を気にもせず、バスルームの壁に押し付けて腰をふる。
数回腰を振っただけで、直継は「あっ」と声を出し、ブルブルと痙攣した。
「わりぃ洋次。このまま……もう一回やらせてくれ」
血走った目でそういった直継に、洋次は何も言わずこくこくと縦に首を振った。
直継はまた腰をふる。
ぐちゅぐちゅと汚い音がバスルームに響いた。
美咲の股間から、泡立つ乳白色の液体が溢れ出す。
それを見ながら、洋次はズボンの中に手を入れ、自分のものをしごいた。
「はぁっ! はぁっ! すげぇ! すげぇ!」
夢中で腰をふる直継に抱きかかえられ、美咲はうめき声を上げる。
洋次が彼女の右足を流れてゆく白い液体を目で追うと、それは膝の下辺りでどす黒い液体と混じっていた。
白と黒、二色が混じる。
そこに現れた色は、なぜか赤。
傷跡から流れる血の色だと気づくまでに少し時間がかかった。
「ヴァうぁあぁァぁ!」
次に洋次が気づいたのは、美咲のうめき声だった。
顔を上げると一面の赤。
直継の首の肉を噛みちぎり、白濁した目の美咲の顔があった。
もう腰をふることもできない直継が、美咲だったものと一緒に倒れ込む。
押しつぶされた洋次は、目の前に現れた美咲と目があった。
それでも右手は自らをしごく。
美咲の柔らかな体が洋次に
まだ温かい美咲の唇。
柔らかな舌。
そして鋭い歯が自分の肉をそぎ取る感覚とともに、洋次はズボンの中で果てた。
――了
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