第4話 告白2

海からのドライブは沈黙だった。

彼を自宅近くまで送り届ける。


「おつかれさま」


本当は、「またね」と言いたかった。離れた瞬間から不安と焦燥感、会いたいという気持ちがこみ上げてきた。


「今日はお父さんいないし、残り物とか適当に食べよっか」

自宅に戻り母親の顔を見て、自分がいけないことをしている、あの人とはもう会ってはいけないんだと強く思う。


「今日も一日お疲れ様、今仕事から戻りました」


婚約者からのメールに申し訳ないくらい何も思わなかった。

今思えば、当時27歳の私は恋愛をしたことがなかった。容姿は悪い方ではない。仕事も百貨店の受付嬢。モテないわけがない。

つき合う条件は「お金持ち」かどうかだけだった。


たっぷり1時間かけて半身浴をしていると、聞きなれない着信音。

裸のまま飛び出して携帯をとる。


「俺、さっき言えなかったけど実は性同一性障害なんだ」

???初めて聞いた病名だった。意味がわからない、会いたい。


「意味わかんないんだけど、これから会わない?」

二言目にはそう言っていた。

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