魔王様のみせばん!

チョコレートマカロン

1日目 いめーじ!

紅、黒、桃、狂気、火炎、凶器、悲壮

罵声、灰、悲鳴、怒号、辛辣、戦慄

それらが交差し、混ざり合い、混沌と化す。

それが戦場。

戦場ではいつ誰が死ぬか分からない。

もしかしたら次の刹那には—―。

勇者はそんな恐怖をねじ伏せ、

眼前にいる魔王を睨みつける。

風と雨が鎧を叩き、頭上を矢が往来する。

もはや味方の矢か敵の矢なのかも分からない。

魔王と勇者。

双方の親玉にして不倶戴天の敵。

対峙した2人は剣を抜き、最後の戦いに身を投げる―――。


これがよくあるファンタジーのイメージでしょうか?

いや、待ってください。

こんなRPGみたいな物語 シナリオ があるわけないじゃないですか。

そもそもRPGで勇者がEXP《経験値》を貯めてる間、われわれ悪魔は何をやっているんですか?

訓練?

武具の手入れ?

全部ハズレです。

実は勇者の来るルートを何度も思考し、ちゃんと魔王様の元へたどり着けるようにしているのです!

[だって出番なしとかつまらないし、一方的に攻めても弱いものイジメしてるみたいじゃん!?]

By魔王様


まあ、という訳で悪魔は結構フリーで楽しい時間をすごしているのです!

下級悪魔である私もついこの間、有給をとって海にでかけてきました。

かき氷食べたりかき氷食べたりかき氷食べたりしましたね。

ん?かき氷しかくってねぇじゃねぇかって?

こまけぇこったぁきにすんな。

もちろん、海も泳ぎましたよ?

リヴァイアサンが経営してる海なので、サメに襲われる心配もないですし。

え?信じられない?

まあ、悪魔なんて名前がついてるから信じられないってのも分からなくはないです。

じゃあ悪魔の代表である魔王様の生活を見ていただきましょう。

まぁ、あれです。

習うより慣れろ!

ってやつです。いわゆるフィーリング、フィーリング。

あっと、そろそろ休憩時間が終わってしまう。

ではあとは大元帥様に匙を投g、、、じゃなくて頼みますか。

それでは!

私はこの辺で―――。



=====

どうも。

大元帥のルシファーです。

かわいい部下の頼みと言うことで、断るわけにもいかず、

今こうしてドアの隙間から

魔王様の部屋を覗いています。

「うーん」

あの方こそ

我ら魔族の長である魔王サタン様。

どうやら今はお悩みのようです。

「このアイアンメイデン、、、、何かが足りない、、、、。」

目の前にはゴツゴツとした鉄製の拷問器具。

鉄製の棺に見えますが、内部は鋭い針で埋め尽くされています。

そこに入ったものは無論、苦しみもがきながらその一生を終えるようになる訳なのですが、、、。

「、、、、やっぱり外すのはアウトだっただろうか、、、、。」


どうやら針を全て撤去したみたいですね。

もうただのインテリアですねはい。


「いや、あれは危ないし誰か怪我したら大変だ。

うん。大丈夫大丈夫。」

魔王様...さすがです!

部下が怪我をしないようにですね?

あぁ。魔王様!一生ついて行きます!!

おっと、そんなこと言ってる合間に

魔王様は1人、玉座の間をグルグルと円を描くように回り始められました。

同時に風に煽られてなびく(予定だったのでしょう)長いマントもズルズルと引き摺られて音を立てております。

それから13と半回転した時でしょうか?


刹那、はっとしたように立ち止まる魔王様。

もしや、何か思いついたのですか魔王様!

この状況を打破するようなナァイィスゥアァァイィデェアアを!


あぁ!そうなのですね!

貴方様のその自身ありげで、少し薄笑いを浮かべた顔からどれだけ素晴らしい案なのか私は悟ってしまいました!

ですから是非!是非この私めに教えてください!


「そうか!ファッションだ!!!

オシャレが足りなかったのか!そうか!!」

…。

「いや、俺思ってたんだよ!

魔王だからってわざわざ部屋を黒いペンキで塗らなくてもいいんじゃないかって!

だって地味じゃん?もっと派手にいこーぜ?なっ?なっ?」


…...という訳で。

アイアンメイデンには化粧を施し、

アイアンメイデン用の服を身につけさせ、

部屋の内装は、軽く子供部屋と見間違いそうな程、

カラフルに壁を染め始められました。

ん?アイアンメイデン用の服ってなんだって?

むしろ教えてください。。


「アイアンメイデン用の服って何ですかぁ!」


「おぉぅえぇ?

あれ?ルシファー?

いい所に!

ちょっとそこのペンキ取ってくれない?」

私ははっとして、大声を上げてしまったことに気づきました。

「はっ!つい、大声を、、、、。

あ、こ、このペンキですね!

只今―――」

途端、私は何かに足を引っ掛けバランスを崩してしまいました。

そしてペンキの入ったバケツは中を舞い......。

バシャっ!と音を立てて私の頭上を覆いました。

「ル、ルシファー!?

だ、大丈夫......じゃないな。」

「ま、魔王様!

も、申し訳ありません!

今すぐペンキを――。」

「いや、いい。」

「ですが!」

「ルシファー。」

冷徹な声音が響きました。

あぁ、私も遂に失脚か。

ならばいっそ腹を切り......。

そう思っていると、

魔王様は私を見つめこのようにおっしゃいました。

「......お前めっちゃイケてる。」

ペンキだらけの私を見てそうおっしゃいました。

「へ?」

「今のお前めっちゃオシャレだぞ!?

いいな!それ!」

そう言うと、魔王様はアイアンメイデンにかけ始めました。

緑色になったそれを見ながら

「ルシファー!

お前、明日褒美に休みをやろう!

たまには家族で遊んでこい!」

とご満悦の様子でございました。


~~~~~


「出たなぁ!魔物めぇ!」

一方、こちらの剣を振りかぶって魔物に突進しているのは勇者アンタレス。


ドゥルルル。

スライムが現れた。

どうする?


攻撃←

逃げる

逃げる

逃げる(全力)



コマンドメニューに何故逃げるが3つもあるのか。

これは決して臆病だからではない。

実はTV番組{逃走中です}

において、彼は1度ハンターから逃げ切っているのだ。

決して臆病だとか、そういうんじゃない。断じてない。

無いったらない。

「よっし!

村で鍛えた俺の腕を舐めるな、、、、よ?」


しかし、彼の突進は突然ピリオドを打たれたかのように止まってしまう。

「なっ!、、、、ちょっ!


これ。。」

そう。

なぜなら彼のコマンドにはこう表示されていた。。


攻撃← [逃走]

[逃走]

[平和が一番]


そう。

まともに戦える技が一つも無い。

「いや!平和は大事だけどさ!

って言うか平和は一番ってどんな技名だよ!

ちょっ

世界平和の前に俺が死ぬわ!馬鹿野郎!」

......。

思わず近くにあった杉の切り株を思いっきり蹴り上げてHPが半減する。

「うがぁぁあああああ!!!」

レベル1なので、hpは20しかない。

一方スライムはお食事の様である。

今日のメニューは草


スライムは草食で、基本肉等は食べない。

と言うかホントはなんの害もないのである。

ん?

うん。まじで。

そして、この形に決まりのない生物にはある一つの特技がある。

それは、植物を育てること。

彼らはそうやって、自らの食料を自己生産しているのである。

そして、今も草が生えまくっている。

「って!

うまいこと言ってんじゃねぇ!!」

そう言ってまた切り株を蹴り上げる。

「あ」



その日、勇者は初めてコンテニューを使った。



勇者は30EXPを手に入れた。

次のレベルまで、あと50EXP ▽

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る