歳をとるということ
2017年9月17日日曜日
父と二人でラーメンを食べに行った。
懐かしい味がした。
昔、夜遅くに帰ってくる父が、私たちの為にお土産で買ってきてくれたラーメンだった。
歳をとると、懐かしいことが増えてくる。
当たり前のことだが、その事実に気が付くと感慨深い。
不思議なことに、つい最近まで忘れていた事柄が、何年後か、何十年後かに出会ったある何かと結びついて、「懐かしい」という経験になる。
その経験は、時に私を温かい気持ちにさせ、寂しい気持ちにさせ、苦しい気持ちにさせる。
私はまだ何十年も生きたわけではない。
けれど、今までの二十年と少しの間で、様々な気持ちの種を心に植え付けてきた。
そしてこれから先の何十年間で、私はまた様々な気持ちの種を心に植え付け、花を咲かせていくのだろう。
「歳をとる」ということは、「大人になる」ということではない。
「大人になる」ということがどういうことなのか、私にはまだわからない。
ただ、「歳をとる」ということは、なんとなくわかった気がする。
古い記憶と新しい記憶が結びつく経験を積み上げたり、懐かしいことが増えたり、そういうことが、「歳をとる」ということなのだろう。
かつて住んでいた街を、父の運転する車から眺める。
「懐かしい」と呟いて、「懐かしいことが増えていくことが、歳をとるってことなんだね」と私は言った。
父は、「その分、新しいことに出会っていくんだよ」と続けた。
車の揺れが心地よくて、私は少し眠る。懐かしい心地だった。
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