翌10:00

 翌朝になっても僕は疲れが残っていた。

 そのため、ホテルの野外プールに備え付けられているソファーから、海を眺めることで時間を潰した。

 空腹を感じたので、手元のメニューを見て、あれこれ悩んでいると、泳いでいた佳南子かなこさんがプールの縁に置いていた眼鏡をかけ、こちらに歩いてきた。

 黒縁メガネと黒いビキニがすばらしい相乗効果をあげていた。

「しかし、今日も盛ってるなあ」

 佳南子さんの胸元を見ながら、僕は小声でつぶやいたあと、急に食べたくなった盛りそばを注文した。


 プールの脇に置いてあるダブルベッドに僕たちは坐り、しばらく、たわいのない話をした。

 やがて話が尽きると、そばを食べている僕の横で、佳南子さんがグラスにお酒をそそぎながら、何気なく言った。

「そろそろ君は、私の父親に会うべきだと思うのだが」

 その一言に、僕はそばをのどに詰まらせながら、「なるほど、そう、きましたか」と思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る