そんな異世界、俺は絶対に許さない
小鳥遊咲季真【タカナシ・サイマ】
第1話 異世界へ行く前の幸福論
幸せとは何かという命題に対して未だ明確な答えを出せていない人類であるが、それでも今でも多くの人がその曖昧な現象である幸福を求めているのは事実であろう。しかし、結局その価値観や解答については個人に委ねられ、自分自身でその幸福の定義を作るしかないわけだが、正直それが何なのか分からない人が多いのもまた、事実。
然したるこの俺も紛いもなくその一人で、幸せとは何ぞやと聞きたくても聞けず、たとえ誰かに聞かれてもこれだと答えられるほど大それた技量を持ち合わせた人間でもない。だからこそ幸福論について語る人がいれば、その内容真偽を問わずしてつい耳を傾けてしまうような、そんな周囲の価値観が気になる年ごろの俺なのだが、はてさてそんな普遍的性格の持ち主である俺ですら、数少ない友人から幸せになれる世界があるという噂を聞いた。いや、正確にはその世界から帰ってきた後に幸せになれるんだそうだ。これが本当であれば、幸せごときで悩んでいるやつなどバカであるとしか言いようがなく、西にいても東にいても悩まずにただそこに向かえばいいことになる。だって、幸せはその世界の後にあるのだから。探す必要も、求める必要もない。まさか男女間の友情、死後の世界に次ぐ三大人類永遠のテーマの一つが解決されるかもしれない日が来るとは思ってもみなかった。
そもそも幸せがこの世界のどこかにあるだなんて、ホントいつから思い込んでいたのだろうか。
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