パイロットさんちのコクーンさん
ウォタ子に出会ってしばらく、二人きりでやっていた僕ですが、ある日訪れたロフトで運命に出会いました。
それがパイロットさんちのコクーンさんです。
コクーンの名の通り、キャップを閉じた姿は繭のごとき流線型。
アルミ製の身体は適度な重みがあり、筆記の際には筆先に落ち着きを与えてくれ(ているような気がし)ます。
端的に言ってめっちゃかっこいい。
お値段だいたい五千円。万年筆としてはかなり安いものですが、かといって僕の懐的には全然お安くない。めっちゃ痛い。
半年近く迷った末、無い金を貯めてお迎えしたのでした。
先だってご紹介したウォタ子は金ペンですが、コクーンさんは鉄ペンにあたります。つまり、ニブがステンレスです。
ステンレス製のニブはお値段が安い代わりに、カリカリした書き心地になります。ペン先が硬いためですね。
このカリカリが嫌、やはり金でなくては、という人もいれば、むしろ鉄ペンでガリガリ書いていくのが楽しい、という人もいます。
万年筆は買う前に必ず試し書きさせてもらいましょうね。
さて、そんな鉄ペン、コクーンさん。この子は鉄ペンのスタンダードに漏れず、カリカリ系の書き心地です。
長いことウォタ子のぬるぬるに慣れていた僕としてはちょっとした違和感がありました。ですが、インクの出もいいですし、カリカリと言っても紙に引っかかるような雑な感覚ではありません。その点はむしろするするです。
鉄ペンの書き心地が好き、という人ならきっと気に入っていただける一品です。
何よりかっこいいし。
ちなみにこのコクーンさん。我が家には二本いらっしゃいます。
それというのも、一本目をね、買って一ヶ月経つかどうかというころに自分の頭より高い位置から落としてペン先を破壊してしまいましてね。
わざとじゃないんです。
バイト先に持ってってたんですよ。
カバンに入れておくじゃないですか。
カバンをロッカーにしまうじゃないですか。
それで、バイトが終わっていざ帰ろうという時にですね。運悪くカバンから滑り落ちてしまいましてね。
さらに運が悪いことに、その日に限って高い位置のロッカーを使ってましてね。
彼は床に落ちて、二回跳ねました。
一度目でキャップがはずれ、二度目でニブを床にしたたか打ち付けて、彼は二度と動かなくなりました。
とても悲しい事故でした。
彼は現在洗浄して保管してあります。ニブが曲がっただけなので、いずれ修理に出して蘇ってもらうつもりです。
今は若干選手が余り気味なので修理は先延ばしにしていますが。いつの日か。
ちなみにウォタ子は頭より高い位置からの落下を都合十回以上経験しています。わざとじゃない。わざとじゃないんだ。
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