怪談のある高校生活

@amaka

影の無い生徒-1

「すやすや…」


 僕の隣で美少女が寝ている。しかも僕と手を繋ぎながら寝ている。

 最初に断っておくが、彼女は僕の恋人…ではない。それどころか、僕からしたら、今日が初対面な女の子だ。

 それが、一つ屋根の下、同じ部屋で、同じ布団で眠っている…僕は寝てないけど。いやいや、誤解しないでいただきたいのだが、僕はそんなプレイボーイでは無い。初対面の女子とベッドイン出来るような特殊スキルは持ち合わせてないのだ。


「すやすやすや…」


 綺麗な寝顔だ。ショートカット気味の黒髪が少し顔に掛かって、妙に色っぽい。僕が紳士じゃなかったら、間違いが起こっていたことだろう。

 …いや、単に僕に度胸がないということだけではなく、寝る前に本人から釘を刺されているのだ。

「寝ている私に変なことをしたら、これで殺すからね」と。

 手を繋いで寝ている、と言ったけれど、僕と繋いでいる手とは逆の手に、彼女は五寸釘を握っている。一時の欲に流されて、五寸釘で殺されたくはない。


 とはいえ、思春期真っ直中の高校2年生男子である僕にとって、この状況は非常に辛い。拷問だ。

 もちろん、正直に言えば、こんな美少女と添い寝出来るというのは、手を繋ぎながら添い寝出来るというのはうれしいことなのだが、そこから先に進めないというのはなかなかの拷問であろう。


 何故僕はこんな拷問を受けているのだ…。

 夜が明けるまで、まだまだ時間があることだし、これまでの経緯を振り返っておこうか。これからの行動を考えるためにも。

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