棺桶図書館の司書……と、その弟子

べる・まーく

プロローグ 棺桶図書館の司書

 ――棺桶図書館コフィンライブラリーの司書。

 棺桶図書館と名前がついているが、これは土地や建物を示す言葉ではない。

 棺桶図書館とは、『遺品カタチ』を保管する概念的存在の、架空に存在する図書館だ。


 そして、棺桶図書館コフィンライブラリの司書を名乗る者は、人の死に立ち会い、その者がその者であった記憶を代償に『遺品カタチ』にするための錬金術を使う。


 人の生を死の間際に『遺品カタチ』に残す送り人。

 それが死神の加護を受けた、使徒たる棺桶図書館の司書の役割なのだ。


 各地にある死の神シンダンデスを祭る教会。

 そこにある祭壇で、司書から通行許可の祈りを受けた人々は亡き者の『遺品カタチ』に触れる事が出来る。

 つまり、人々は棺桶図書館の司書のお陰で、死を迎えた想い人の記憶に触れ、棺桶図書館の中でその者の記憶に触れる事が出来るのだ。


 死を知らせるが、死を迎える者の記憶を刻む棺桶図書館の司書。

 異世界にあって死の間際に現れる都市伝説のような全身黒づくめの使者。だが、人々は彼らを忌むべき存在ではなくむしろ崇め称える。


 そう、人々は畏敬の念を込めて棺桶図書館の司書である彼らをこう呼ぶのだ――『白菊の死神』と。

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