ありがとう勇者、もういらない
武石こう
三年前 少年は勇者
世界を救う勇者エクセルと四つの剣
とある世界があった。
とある世界の名はレメリス。数多くの人が存在し、人がいればその分多くの国が存在し、時にはいがみ合い、時には協力し合いこの世界なりに安定し歩みを進めてきた。
だが今レメリスは長きにわたって争いを続ける世界となってしまっていた。
人同士ではない。レメリスとは違う世界からやってきた異人と呼ばれる存在との争いだった。彼らはこの世界の人には使えない術を使い、レメリスへとやって来てその領土を脅かしていった。
異人は個体としてレメリスの人を超えており、その力は強大。
しかしレメリスの人もただやられるのを見ているだけではなかった。長い歴史で培ってきた戦いの力とその数によって抵抗し続けていた。
人間と異人、その戦いは何度かの短い休戦を挟んでそれは長く長く続き、すでにレメリスに住む人の三世代に突入していた。すでに戦いは一つの日常となっていた。
この戦いは終わらないもの。そう誰もが感じ、信じていた頃。
一人の世界に選ばれし少年とその仲間たちが現れた。
「あと少しで異人の王の城だ! いくぞっみんな!」
その世界に選ばれし少年はエクセル・ロンロ。十四歳とは思えぬ強さと勇猛さに人は彼のことを「勇者」と呼んだ。見た目はただの普通の少年であるが、しかし彼はこの止まりかけの世界を再び動かし始めた。
彼の元に集まった仲間たちも世界に選ばれし四人の少年少女たちだった。世界を作り、見、そして崇められる存在は若き可能性に力を授け、道を探させたのだ。
世界の西の果てにある異人の王の居城。エクセルたちは様々な困難を乗り越えついにここまでやって来たのだ。あらゆる国の軍隊が到達できなかったこの地にまで。ついに長きにわたる戦いの終わりの時がすぐそこにまで来ている。
誰か一人の力ではない。誰かが欠ければ来られなかった。
「ついに来たな」
仲間の一人、ライド。ライド・オーロ。十六歳、最年長の少年。大柄で筋骨隆々な体の戦士、選ばれし者「東の剣」
「うん、色々あったけどね」
仲間の一人、ベルナ。ベルナ・ルーラー。十四歳の少女。仲間の中で一番小柄で一番幼く見える戦士、選ばれし者「北の剣」
「やってやりましょうよロンロさん!」
仲間の一人、セブリ。セブリ・スニル。十二歳、最年少の少年。それでもエクセルと同じくらいの背丈(エクセルは低いわけではない。年齢からすると平均的だ)に大人びて整っている顔立ちの戦士、選ばれし者「西の剣」
「これで世界が、みんなが本当に静かに暮らせるようになるんだね」
仲間の一人、クーエ。クーエ・パトロナ。十六歳。長い髪の、本来戦いが似合わない優しい微笑みの戦士、選ばれし者「南の剣」
各方角の剣の中心に存在する選ばれし者、それが「天地の剣」、勇者エクセル。
レメリスに存在する各国から引き寄せられし剣。異人を討つ剣。
「そうだ。俺たちが勝てば、異人の王を倒せばみんな笑って暮らせるようになる! そして帰ろうぜ、そしてみんなの国をもっと案内してくれよ!」
円に並んだそれぞれが剣を抜き、その切っ先を合わせた。
あらゆるものを砕く、ライドのバカみたいに幅広く長い刀身のロングソード「レーラン」
刺せぬものなどない、ベルナの古き竜をまとうエストック「フィンバル」
伸びる拳、セブリの多くの血を飲んできたジャマダハル「リーターク」
星ですら断つ、クーエの死にゆくものに安らぎを与えるサーベル「オルコ」
そしてそのすべての剣を一本で併せ持つ世界に作られし始祖の剣、エクセルの「サーリアス」
その先にある平和をエクセル、そして剣たちは信じて足を踏み出す。
しかし本筋はそこから三年の月日が経ったところから始まる。
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