氷の少年
きつね
No.1 ペンちゃん
「おお!我らがーーーーーーよ!我らが女王、ーーーーーーよ!」
階段を登る「我らが女王」。後ろを向かず、毅然としている。
「我らが女王に祝福を!我ら国民に幸福を!」
「我らが女王」は足を止める。その瞬間、異常な程の冷気が、場を包み込む。
目が覚めると、白い屋根が真っ先に目に入った。
眠たそうな彼の名はタクリット・ベルノア。
彼は過去では『南極』と言っていた、『アイスグランド』と言う島に住んでいる。
アイスグランドは、地球温暖化の影響で孤島化し、昔は『フィリピン』と呼ばれていたらしい『シータ領土』に領土化をされた。
シータ領土自体は遠いが、アイスグランドには様々なシータの名物がある。
その中でも、タクリットのお気に入りは、シータの野菜とシータ領海の切り身魚がたっぷり入っている『シーサラダ』。
アイスグランドにはペンギンが生息する。
タクリットはたまにシーサラダの切り身をペンギンに与えたりしている。
ペンギンにもたくさんの種類がいるのだが、最近見慣れないペンギンが切り身目当てにやって来るようになった。
タクリットが眠い眼のまま市場に赴くと、いつものペンギンの群れと、一際目立つ見慣れないペンギンがタクリットのくれる切り身を待っていた。
「今日も来たかぁ、よーし、今からシーサラダ買うからな〜」
お店のおばさんに、「すいませーん、シーサラダ1つ……いや、今日は2つで!」と頼み、待っている間ペンギン達のかまってアピールに付き合っていた。
その時、「ペンちゃん!」とこれまた聞き慣れない声が聞こえてきた。
「も〜いつもこの時間にどこかに行くと思ったら、シーサラダ食べてたのね!もー、欲しいなら言いなさい!めっ!」
青いドレスにに白いマフラー、長い黒髪に青い目をした少女は、見慣れないペンギン『ペンちゃん』を抱き抱える。
「あの…この子、ペットななんですか?」
タクリットが恐る恐る聞くと、少女は「あたりまえでしょ!」と言わんばかりの顔をして、
「そうよ!この子はあたしのだいすきなペンちゃん!かわいいでしょ〜!」と返してきた。
身なりからして、裕福な家庭の娘なのだろう。そんな娘が、こんな安っぽい市場にいつも何の用だったのだろう。
「んもー、帰るまであと1週間だよ〜、どこに行こうかペンちちゃん?」
少女が聞くと、ペンちゃんは少女の腕を抜け出し、タクリットの元へ歩き出し、小さな羽でタクリットを指した。
「えー、そんなにその人からシーサラダが欲しいの?……じゃあ、もう最後までここの近くに居ますか。いつもペンちゃんが迷惑かけてごめんなさいね。ありがとう!」
少女はにかっと笑った。その時タクリットが少女に恋したのは言うまでもない。
そして、少女が自分よりもひとつ年上だということを知ったのはその直後だった。
「あたし、キルリッカ・シータ!14歳!リッカって呼んでほしー!」
「年上……」
「あら、あなた何歳?」
「13です。タクリット・ベルノア。じゃあ俺のことはリットって呼んでください。」
「1つしか変わらないじゃん!じゃあリットくん、ペンちゃんもあなたの事を気に入ってるし……一つお願いがある!」
「1週間、家に泊めて!」
父は氷の彫刻家、母はかき氷屋を経営している。都合が良すぎると思われても仕方ないが、父は今月彫刻展を開くために『イータ領』へと赴き、母はつい3日前に親戚を亡くし、当分は『イプ氏シー領』に居ると言っていた。今はお隣のグラッツェおばさんに何かあったら言えと言われている程度で、家には弟のマルゲリータしかいない。
氷の少年 きつね @penguin__chan
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