第12話救出作戦開始
僕達はとり急ぎこのVRMMOの世界から戻って、ゆかり先輩に安達と僕の案を提案した。
今回の対策会議の連中はあまりにも突拍子もない事が起きた上に情報が全くないという事で、何も決断ができない思考停止状態に陥っていた。
その隙をついてゆかり先輩は行動を起こした。
「本当の官僚とは独断専行できる人の事を言うのよ」
と嘯(うそぶ)いている先輩が素敵に見えた。
早速ゲーム内でスペシャル・クエストを告知した。
このゲームでのレアアイテムつかみ取りという破格の勝利者権利を手土産に居残ったゲーマーに告知を試みた。
この作戦は見事に当たった。どうせ彼らは二度とこの世界に戻る事はないのだから、レアアイテムは文字通り宝の持ち腐れになるだけだが……。
居残っているゲーマ全員の参加意思を確認できた時点で、今回の救出作戦は成功したのも同然だと僕は思った。
ラスボス戦は次のイベントで予定されていたダンジョンでのイベントをそのまま使う事にした。
本来のボスキャラではゲーマに普通に攻略されかねないので、ラスボス戦用の最強ボスキャラを用意した。
このボスキャラを考え付いたのは安達だった。
ボスキャラ戦当日、入院中のゲーマーたちにはヘッドギアが装着されていた。噂が拡散しないように病院を一箇所に集中していたのが幸いした。
それを確認後、僕達もゲームの世界にダイブした。
安達と僕と研二の3人は秀人と杏奈をメンバーに加えて5人のユニットで参加した。
他のゲーマーも5~7人のユニットを組んで参加していた。
全部で36名。
僕達はダンジョンの中に入った。
これまでお目にかかれなかったモンスター達がいたるところで現れる。
ここ数か月モンスターとまともに戦っていなかったゲーマーたちは嬉々としてモンスター退治に勤しんでいた。
勿論、僕達は仕事だと割り切っていたが、フルダイブ型のVRMMOでのモンスター攻略がこんなに面白いモノだとは思わなかった。
――これは帰りたくなくなるわ――
仕事をサボってでもやっていればよかったと少し後悔した。
ダンジョンの最下層に目指すラスボスはいる。
通路で湧いてくるモンスターや魔獣は案外強い。
安達曰く「いつもよりちょっと強めにして設定している」という事だった。
流石、後先の事を考えずにこの世界に居残った奴等だ。誰一人リタイアすることなく最下層のラスボスのいる広間にやって来た。
シュートが皆に声を掛けた。
彼はここでは有名人だ。
「準備は良いですか?」
そう言ってメンバーの顔を一人一人見て言った。
彼を見るゲーマーたちはみな一様に頷いた。
「皆さん全てを捨ててこの世界に残った愚か者です。はっきり言ってクズです。でも最後にクズの意地を見せましょう。レアアイテムを全員の手に!!」
「おー!!!」
という全員の掛け声とともに我々は広間の大扉をこじ開け中になだれ込んだ。
目の前に居たのはラスボスという名の怪獣だった。どれだけでかいんだ!?
全滅が目的だとは言えこれはやり過ぎだろう?僕は安達を睨んだが安達も驚いた表情をしていた。
「なんでこいつが……?」
「え?」
「いや、これ僕が用意したラスボスではないです」
「まさか……」
嫌な予感がした。モニター室で笑っているゆかり先輩の声が聞こえる様だ。
「多分……間違いないでしょう。先輩の仕業です」
安達も唇を噛んで悔しがっていた。
それにしても怪獣退治は伝統的に自衛隊の仕事だ。警視庁の出る幕ではない。
僕の仕事は避難誘導だ……なんてことは残念ながら言ってられなかった。
この怪獣の最初の一撃で3人消えた。
「この怪獣の弱点は?」
僕は戦いながら安達に叫んだ。
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