第11話作戦
「ただ、サーバーは自分で格納しておきながら、そのバックアップデータの緻密さ故に、それをその人本人だと誤認していた……というかアルゴリズムからそうなっていたため、回線が切れても違和感なくログイン状態だと勘違いしていた……という事なんです。そのスイッチが『現世に戻らない』いという本人の意思の様です。
これを矯正するプログラミングももちろんありません……まあ、言ってみればバグみたいなものです。
この2つが重なって今回の状況が引き起こされたと考えたので、ゲームデータをバックアップする前に実物の本人に強制的に戻る様にプログラムを実装してみました」
どうやら今は開発者安達モードの様だ。
「何かよく分からんが、殺されたら一気に接続が切断されて、現世に戻れるってわけね?」
「そう言う事です」
「でも、今ここに残っている人結構強いですよ」
ジュリーが僕と安達……もといアサシンのショーの会話に割って入って来た。
「だから僕は
アサシンのショーは怪しく笑った。彼はコロコロ変わる。
しかし、公務員が国民を殺したらまずいだろう?
安達は公務員じゃないかもしれないが、これは内閣府の持ち案件だ。たとえゲームの中だとしても公務で国民を殺す訳にはいかん。絶対に後で問題になる。いや、道義上もおかしいだろう。特に僕は警視庁から出っ張ってきている。これはいかん。先輩もそれを解っているのか?解った上での狼藉のような気がする。
「もしかして今のあんたはラスボスにも勝てるとか?」
僕は話題を変えた。
「勝てる!」
「そんなに強いのかぁ……」
「ああ、そうだ」
アサシンのショーは自信満々に答えた。
「じゃあ、ラスボスみんなで倒さね?」
「は?」
「いやね。『帰らないと殺すぞ』と言われてもたぶん誰も帰らないでしょう?という事は、忠告を聞かずに結局あんたに殺される訳でしょ?」
「まあ、そうなる」
「それなら最強のラスボスにみんなでぶち当たってやられて死んだ方がマシでしょう?違う?」
死んだ時点でログアウトして戻るんだったら誰に殺されても同じ事だ。それにラスボスは公務員ではない。世間の目を気にする心配もない。
「まあ、そうだな……」
安達もゲーム内とは言え人殺しはしたくなかったようだ。健全な思考の持ち主で良かった。
「という事でスペシャルクエスト・ラスボス攻略クエストやんない?」
「全員で勝ったらどうするんだよ。間違いなく俺は勝つぞ」
安達はもっともな事を聞いてきた。
「まあ、生き残った奴はそれで満足してログアウトするでしょう?……というか最初からこのクエストの参加条件にそれを入れていたら良いんじゃないの?ラスボス戦勝利した暁にはレアアイテムをゲットしてログアウトするって事で。それでも戻らんのならあんたがやっちゃったらいいじゃん……というかあんたは手を抜いて全員が全滅するようにしてくれたら良いんだよ。マジでラスボスを倒そうなんて思わない様に……」
僕もここに来てからゲームキャラの立場が板についてきたみたいだ。
言葉遣いも変わってきたような気がする。
「それもそうだな」
そいうと安達はまだアサシンのショーに戻った。なんでもなりきるタイプの様だ。こいつは案外分かり易い。
「ローリーはどう?ここでの思い出にみんなで戦うって」
「……はい。分かりました。私もゲームの中とは言えアサシンのショーに殺されたくないです」
と本当に気味悪そうに言った。
安達は開発者より役者になった方が良いのではないか?と思う。
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